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2018.02.28

世界の「交通革命」に逆行 日本の時代遅れな都市計画

(Photo by Carl Court/Getty Images)

電気自動車(EV)、自動運転、ライドシェア……いまひたひたと「交通革命」の波が押し寄せて来ています。「交通革命」は未来のクルマ社会に、安全で低コスト、渋滞しにくく、環境にやさしいシステムをもたらしますが、残念ながら、日本でこれに対応した都市計画を練っている自治体は、筆者が見るところ、ほとんど皆無に等しい状況です。

ある自治体の首長さんに「都市計画に、自動運転やライドシェアなどの交通革命を織り込まなくていいのか?」と聞くと、「いまのままでは、まったく時代遅れになってしまいますね」と衝撃的な言葉が返ってきました。国もメディアも、「これからはコンパクトシティだ!」と喧伝しているようですが、果たしてそれで来たるべき「交通革命」に対応できるのでしょうか。

都市を劇的に変える「交通革命」

アメリカのウーバーとリフトの2社から始まり、世界に広がった新交通サービスは、日本ではライドシェア対タクシーの構図で語られる場合がほとんどなのですが、実はこのサービスは、自動運転と組み合わさり、社会に大きなイノベーションを起こします。

リフトの共同創業者John Zimmer氏は、2016年9月のブログに、次のように書き記しています。

「自動運転車が広まり、5年以内にリフトのサービスの大半を占める」「2025年までにアメリカの主要都市で、クルマ所有が終わりを告げる」「都市の物理的な環境は、かつて経験したことがないほど大きく変わる」

また、ボストンコンサルティンググループが昨年公表した調査結果では、「2030年までに、アメリカの道路を走行する車の、全走行距離の4分の1が自動運転に置き換わる」と予測しています。時期の差はありますが、リフトの共同創業者と同じ方向性です。さらに「ライドシェアや自動運転車、EV自動車の普及により、移動コストは6割削減される」とも明らかにしています。自動運転車はそれ自体が高額でも、現状タクシー料金の7割以上を占めている人件費が削減され、クルマをシェアすれば、とても経済的なサービスとして使えます。

これまではドライバーが操作する1台1台バラバラだったクルマが、ネットワークされることで、自動運転車「群」となります。こうなると、もはやシステムとして捉えた方がいいですね。だから効率も利便性も上がるわけです。

新しい交通システムが実現すると、都市に大きなインパクトをもたらします。まず、都市交通全体の変革です。自動運転が実現していない現在でも、アメリカではウーバーとリフトの2社で1日約700万の人を運んでいます。これはタクシーの3倍、バスの半分にあたるようです。また、タクシーより安く、ユーザーの満足度も高いこの2社は、地下鉄など公共交通機関のユーザーまでも取り込んでいます。

ネットワークされた自動運転車が現実のものとなれば、さらにシェアは拡大するでしょう。リフトの幹部は、「新交通インフラができたら、多くのバスは要らなくなる」と語っています。つまり、バスや電車など他の交通手段と組み合わせて、ゼロベースでの最適化ができるようになるわけです。

それにともなって、都市デザインの変革も必要となるでしょう。現在は、駐車場、道路などクルマのためのスペースは都市のなかでも膨大で、言わばクルマ中心とも言える都市デザインで、歩行者は肩身の狭い思いをしています。

でも将来、マイカーは減り、クルマの稼働率が上がり、駐車スペースは大幅に少なくてすむようになるでしょう。ちょっと遠隔地にあるお店でも、駐車場を広くとらなくてよくなり、お客さんも低コストで行けるようになります。こうなると都市のデザインは一変し、不動産活用も劇的に変わります。例えば、駅前偏重がなくなり、地価にも影響が出るかもしれません。
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文=本荘修二

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