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ミレニアル・ホテル経営論

HOTEL SHE, OSAKA

いま、ホテルへ熱視線が注がれている。大手ブランドはこぞって自分たちの世界観を投影したホテルを開業し、ゲストハウス経営を志す若者も増え、独自のコンセプトを持つ宿が全国に広がっている。もちろん、ファンドや証券会社もホテル投資に執心だし、既存のホテルブランドにも新しい動きが出てきている。

私は今、ホテルシーンの刷新を掲げるホテルスタートアップ「L&G GLOBAL BUSINESS, Inc.」の代表として、「HOTEL SHE, OSAKA」をはじめ、京都・大阪・湯河原など日本各地で新しいホテルをプロデュース・運営している。この連載では、観光業界の現状からミレニアル世代の消費者心理に到るまで、「ホテル」という切り口を軸に幅広く問題提起をしていきたい。

今回は、爆発的に多様化しているホテルシーンを俯瞰、紹介しつつ、社会情勢を鑑みながら現代のホテルトレンドを紐解いていく。


HOTEL SHE, OSAKA(出典:HOTEL SHE, OSAKA)

インターネット時代の始まりとゲストハウスの高品質化

昨今のホテルトレンドを紹介するにあたって、ゲストハウスカルチャーがホテルシーンに与えた影響は計り知れない。10年ほど前から、SNSの世界的な普及によって個人の発信力が強まった。その結果、ゲストハウスの高品質化が急速に進み、世界各地で同時多発的に「空間的に豊かな」いわゆるカルチャー系と呼ばれるゲストハウスが開業した。デザイン性が高く、面白いコンセプトがあり、快適で安い。現代のホテルトレンドの源流となるこれらの特徴はバックパッカーたちを通じて世界中に広まっていった。

「ホテル」は所有・経営・運営と権利関係が重層的な装置産業であり、その歴史上普遍性を常に求められてきた業種であった。しかし、「ゲストハウス」は所有から運営に至るまでシームレスであり、現場に決裁権があったことが、そのアップデートが実現した理由だと考えられる。

日本のゲストハウスブームの萌芽となったのは、「ウガヤゲストハウス(奈良)」「和楽庵(京都)」だと考えられている。今でこそ当たり前となった、カフェと宿が一体化したゲストハウス、という業態を初めて提案したのがこれらであり、それまでのユースホステル的なインフラ色を完全に払拭した。特に、和楽庵では独立したスタッフが自分の店を構えることが多く、ここでゲストハウス運営ノウハウのオープンソース化が実現した。


和楽庵(出典:Booking.com)


ウガヤゲストハウス(出典:UGAYA GUEST HOUSE)

これらの文脈を汲んで誕生したのがbackpackers japanの運営する「toco.(東京)」「Nui.(東京)」であり、以降ホテルシーンにも大きな影響を与える金字塔となった。また、かつての「ペンションブーム」「カフェブーム」などのリバイバルとして「ゲストハウスブーム」が日本を席巻し、日本各地にゲストハウスが開業した。


toco.(出典:Backpacker’s Japan)


Nui.(出典:Booking.com)

バックパッカーマーケットの広がりとゲストハウスの投資ビジネス化

ゲストハウスがマーケットに受け入れられ、「Generator Hostel」がイギリスのファンドに買収されたことで、ゲストハウスがファイナンスの対象となることが世に知らしめられると、ゲストハウスは不動産ビジネスのコンテンツとして投資の対象となっていった。経営者もそれまでの元旅行者から、中小不動産企業の経営者へと移り変わり、家業から事業へと転換していった。


Generator Hostel(出典:Booking.com)

日本でもその流れは同じで、小田急系列のUDSによる「GRIDS(東京・北海道)」やR-STOREによる「BOOK AND BED(東京・京都・福岡)」、global agentsによる「THE MILLENIALS(京都・東京)」などをはじめ、様々な企業が事業としてホステル経営に参入するようになる。コンセプト・サービスともに高品質の施設もあれば、収益性に偏重した施設もあり、マーケットが飽和した。今後は淘汰が進み、業界的にはここからブラッシュアップがなされると予測される。

GRIDS(出典:GRIDS秋葉原)

THE MILLENIALS(出典:THE MILLENIALS)

BOOK AND BED TOKYO(出典:Booking.com)

ドミトリータイプの宿泊施設は数字上の収益率が非常に高く、基本的に現在の不動産デベロッパーたちはホステルに参入する。しかし、「高品質なドミトリーを作れば高単価で売れる」という事業者の思惑とは裏腹に、バックパッカーたちは価格重視での宿泊を行うため、業界全体として値崩れが進行している。

文=龍崎翔子

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