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Rawpixel.com / shutterstock.com

人工知能(AI)を活用する企業が増えるなか、サイバーセキュリティ業界にも急成長中の新鋭がいる。ホワイトハットハッカーだった過去を持つ、マカフィー元CTOが立ち上げた会社が目指す未来とは。


2014年公開のSF映画『インターステラー』に、クルクルと高速で回転する母船に、主人公が宇宙船をドッキングさせようとする場面がある。

「不可能だ!(It’s impossible)」と人工知能(AI)を搭載したロボットが伝えると、主人公は静かながら力強い口調でこう言い返す。

「違う。必要なんだ(No. It’s necessary)」

米サイバーセキュリティ企業「Cylance(サイランス)」のスチュアート・マクルアーCEO(48)は、同社を立ち上げた理由についてそのシーンを引き合いに説明した。

「あのセリフは琴線に触れたよ。本当に必要なら、どうにかして方法を考えるものなんだ。真の起業家精神とはそういうものだ
と思う。とにかく飛び出して、やり方を見つけるしかない」

映画の場面ほどではないかもしれないが、じつはマクルアー自身も過去にかなり大きなリスクを取っている。サイバーセキュリティ大手「マカフィー」の最高技術責任者(CTO)の職を辞めて、12年にサイランスを元同僚と創業したのだ。

「そのまま残れば、いずれはCEOにもなれたかもしれない」と本人も話すが、それでも“飛び出す”ことに決めたのにはいくつか理由がある。起業家精神が疼(うず)いたのも一つだが、「数学」を使ってサイバーセキュリティの世界を革新できると考えていたからだ。

「数学や統計学に基づくマシンラーニング(機械学習)で課題を解決できることはわかっていた。サイランスを創業する12〜13年前から、コンピュータに学習させる、あるいは人間のように考えさせる方法があるはずだと思っていたんだ」

発案した当時はまだ、現在の「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」のように膨大なデータを高い計算処理能力で高速に処理する技術もサービスもなかった。

しかし時代が追いついた今、マクルアーはその理想を実現しつつある。12年に創業したサイランスでは、数学モデルに基づくアプローチを採っており、AIで未知のマルウェアを予測検知し、防御・駆除するサービスを提供している。

ドイツの第三者機関が実施した製品試験で99.7%という極めて高い検知率を叩き出したことに加え、既知のマルウェアを照合するシグネチャ型とは一線を画す点に情報セキュリティ業界が注目。ブラックストーンやDFJグロース、コースラベンチャーズなどの著名VCから約1億7700万ドルを調達し、今では金融や医療系の顧客を数多く抱えている。

日本でサイランスと提携している情報セキュリティ企業MOTEX(エムオーテックス)の経営企画本部の中本琢也執行役員も“事前防御”に注力している点、それを技術的に実現している点を評価している。

「2年前、ランサムウェアの『VVVウイルス(TeslaCrypt)』が猛威を振るっていたとき、既存のアンチウイルス製品では守りきれずに被害が出るなか、サイランスは100以上のランサムウェアをすべて検知し、新種や亜種もほぼすべて検知しました」と振り返る。マクルアーはその点に加え、防御にも自信を見せる。

「他社には検知ができても、防ぐことはできない。我々にはそれが可能だ。事前防御と検知、駆除のバランスは大切だけれど、まずは事前防御から始めるべき」

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=ヤン・ブース

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