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2018.02.27

黒人映画「ブラックパンサー」大ヒットで見えた米国の変容

Sarunyu L / Shutterstock.com

マーベルコミックの実写化映画「ブラックパンサー」(日本では3月1日公開)が米国の「プレジデントデー」の連休に2億4200万ドル(約259億円)の興行収入をあげ、4日間の成績では「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」につぐ歴代2位、公開初週末の成績では歴代5位を記録した。

また、黒人キャストによる映画は米国外で当たらないというジンクスを破り、米国外でも1億8460万ドル(約197億円)を稼ぎ出した。

「ブラックパンサー」は、アフリカに位置する架空の科学技術先進国ワカンダを舞台に、王位を継いだばかりの主人公ティ・チャラ/ブラックパンサーが国民と国力の源である希少鉱石ヴィブラニウムを守ろうとするスーパーヒーロー映画だ。

「アベンジャーズ」「キャプテン・アメリカ」シリーズなどと共通の世界観で展開する"マーベル・シネマティック・ユニバース"の1本でありながら、アフリカとアフリカ人、そして黒人のアイデンティティに焦点を当てた作品だ。

同作は「クリード チャンプを継ぐ男」のライアン・クーグラーが監督・共同脚本を務め、主要キャストをチャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、ダニエル・カルーヤ、フォレスト・ウィテカーら黒人俳優が占める。黒人監督による映画としても、黒人キャストによる映画としても史上最高のヒットとなっており、2億ドル(約214億円)の製作費と推定1億5000万ドル(約160億円)の宣伝費はすぐに回収できた模様だ。

「ブラックパンサー」はまた、全世界興収のうち43%を米国外で上げている点においても、過去の黒人主人公の映画とは異なる。

2017年に米国の観客動員数が6%減少したこともあり、ハリウッドはこれまで以上に海外マーケットを重視するようになっている。しかし、黒人が主人公の映画は、米国内でヒットしても国外では苦戦するケースが多く、2015年の「ストレイト・アウタ・コンプトン」は全世界興収2億160万ドル(約216億円)のうちわずか20%、2017年の「ゲット・アウト」は全世界興収1億7600万ドル(約188億円)のうち3分の1が米国外での売上だった。

「ブラックパンサー」が幅広い観客に受け入れられている状況について、ディズニーの配給部門チーフのデイヴ・ホリスは「観客は登場人物たちに自分自身を投影できるべきだ」「(多様性が)正しいだけでなく、物語を豊かにする」と「ハリウッド・レポーター」に語っている。

近年、#OscarSoWhite(アカデミー賞の候補者が白人ばかりであることに違和感を表すハッシュタグ)に象徴されるように、ハリウッド映画における多様性の欠如が問題視されている。

南カリフォルニア大学のMedia, Diversity & Social Change Initiativeが行った調査によると、2016年のヒット作に登場するキャラクターのうち70.8%を白人が占めていたのに対し、黒人の割合は13.6%だった。作り手側の人種構成にいたっては、黒人監督はたったの5.6%だ。そして黒人キャラクターの多くは数少ない黒人監督による作品に登場していた。
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編集=海田恭子

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