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世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

山井太 スノーピーク代表取締役社長(右)と国見昭仁 電通ビジネスデザインスクエア エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

なぜ企業は、「大企業」と「中小企業」という規模のモノサシだけで括られるのだろうか。大学生の就職希望ランキングでは、「有名な大企業」に人気が集中する一方で、地方の小さな企業が海外で存在意義を示している例は多い。

規模のモノサシだけで、未来を読むことはできない。そんな思いから、Forbes JAPAN2月24日発売号では、創業10年以上で売上高100億円未満の価値ある企業を表彰するアワードを創設した。アドバイザリーボード12組の協力のもと、全国から250社を選出。「カッティング・エッジ」「ローカル・ヒーロー」「グローバル」「セカンド・ローンチ」「ベスト・エンゲージメント」の5つのカテゴリーごとに、精査と投票を重ねてユニークな取り組みを行う企業を選定した。未来を切り開く、日本が誇る小さな大企業──名付けてスモール・ジャイアンツだ。

誌面で発表する前に、特別に「スモール・ジャイアンツ」アドバイザリーボードの一人、スノーピークの山井太社長と、電通ビジネスデザインスクエアのエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター、国見昭仁氏の対談を紹介しよう。


「苦境」が新しい価値をつくった

──スモール・ジャイアンツの受賞企業には共通点があります。「技術や信念の尖った部分を捨てずに、新しい価値を顧客と共につくり上げていった」という点です。スノーピークの軌跡に近い。「顧客と共に面白い価値をつくる」というのは、どの段階で気づくのでしょうか? まずは、スノーピークのターニングポイントを教えて下さい。

山井:一つは、1988年に「自分たちが本当にほしいものをつくる」と宣言して、キャンプ用品を作り始めたときですね。それ以前は主に釣具などを作っていましたが、SUV車の流行に合わせて、車にキャンプ用品を積んでアウトドアに出かける“オートキャンプ”という新しいライフスタイルを提唱すれば、商機があると考えました。結果、オートキャンプはブームとなり、そのきっかけとなった当社のキャンプ用品の売れ行きも良く、ほどなくして主力の事業となりました。

──しかし、ブームは終わりが来ますよね?

山井:ビジネスモデル転換のターニングポイントは、2000年前後にありました。96年に私が社長に就任した頃が、オートキャンプのブームが一気に冷め始めていた時期です。どんなにがむしゃらに働いても売り上げは落ち続ける一方で、あの頃は最も会社全体が疲弊していたなと思います。

そんな苦境を脱する契機となったのが、「真の顧客との繋がり」です。98年10月、弊社の社員とスノーピーク商品のユーザーが一緒になってキャンプを楽しむイベント「スノーピークウェイ」を初めて開催しました。ここから、うちのビジネスモデルが変わり始めたんです。

──具体的には、そのイベントで何があったんですか?

山井:実は、我々が直接ユーザーと顔を合わせて、製品に対する率直なフィードバックをもらったのは、この機会が初めてでした。その生の声に触れた瞬間、「我々が向き合うべき真の顧客は彼らユーザーなんだ」という大事な前提に立ち返ることができた。流通や小売の業者は「ビジネスパートナー」であって、顧客ではない。真の顧客である“スノーピーカー”を幸せにすることこそが、我々の存在理由なのだと。

その後、イベントで得られたユーザーの声を真摯に受け止め、2000年のシーズンから販売体制を一新しました。問屋を介さない小売店との直接取引へ移行して、価格設定を見直しました。特約店方式による全商品展開の戦略です。これらの施策が功を奏して、業績を上向きに持ち直すことができました。

構成=西山武志 写真=井上陽子

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