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2018.02.28

ロシア占有ではない? 加熱する国産キャビア養殖の現場

白米とキャビアの組み合わせも(Photo by Mami Whelehan)

キャビアはいわずとしれた高級食材。フォワグラやトリュフと並んで世界三大珍味としても知られているが、高価であるがゆえに庶民の口にはなかなか入らない。一般的には結婚披露宴の料理に小指の先ほど盛られているのをありがたがって口にする程度だろうか。

一生に一度くらい、遠慮しないで思い切り食べたいなと思っていたら、タイミングよく「キャビア生産の現場を見にいってみますか?」とお誘いいただいた。いや、さすがにロシアは遠いからとお断りしようとしたら、行き先は静岡県浜松市だという。国産キャビアが作られているとは、浅学にして知らなかった。

現在、日本でキャビアを生産しているのは40社ほどだという。そのうち、国内最大手となるジャパンキャビア社(宮崎県)は1983年からキャビアの親となるチョウザメの研究に着手。30年かけて安定生産に成功し、2014年に初めて国産キャビア「宮崎キャビア1983」の販売をスタートさせた。2017年には初の海外輸出も成し遂げ、今後ますますジャパンメイドのキャビアは注目されていくだろう。

ということで今回見学に訪れたのはHARUNO CAVIAR VALLEY(静岡県浜松市)。2015年に事業をスタートさせた後発ではあるものの、東京の三ツ星レストランで取り扱いがスタートするなど、その勢いたるやまさにウナギ登り(チョウザメだけど)だ。



さて、このチョウザメ。鮫という音も入っているため誤解されがちだが、サメの一種ではない。サメは軟骨魚で腎臓をもたないため、肉にアンモニア臭があるが、チョウザメは硬骨魚で腎臓もあるため、肉に臭みはない。姿はたしかにサメに似ているけれど、まったくの別物なのだ。

ここHARUNO CAVIA VALLEYでは約1万尾のチョウザメを養殖している。チョウザメを小さな稚魚から育て、魚卵を収穫できるまでは最低でも7年。チョウザメの一生で一度だけ採卵するというから非常に贅沢なプロジェクトだ。国産品だから値段を気にすることなく、思い切り頬張れると思っていたが、どうやらそうでもないのかな……。


 
値段のことはさておき、輸入品のキャビアといえば、長期保存を前提としているため、1. しょっぱく味付け(塩分濃度6〜10%)、2. パストライズ(低温殺菌)、3. 保存料添加、4. 冷凍保存、されているのが一般的だが、HARUNO CAVIARは朝採卵したキャビアを3%程度の塩で味つけし、低温殺菌も、保存料添加も、もちろん冷凍もなし。賞味期限は3週間と短いものの、その分、フレッシュな味わいが楽しめるのが魅力なのである。

この日はチョウザメの養殖を見学しただけではなく、自分だけの味つけでキャビアを作らせてもらった。30グラムの朝採りキャビアに10種の岩塩・海塩から好みのものを選び、フレッシュな魚卵にやさしく混ぜて出来上がり。11月〜3月の産卵期のみ体験できるプログラムということで、気になるお値段は1万5000円(30g)だった。



作ってから1週間程度熟成させ、味見をしたが、あっさりとした繊細なおいしさはさすがは国産と思わせるものだった。私はワインと合わせたが、日本酒との相性もよさそう。一緒にキャビアを作った知人はおにぎりにのっけていたが、それが最良の食べ方かも。次のチャンスがあれば真似したい。

さて、このチョウザメ、世界記録では152年生きたものもいるそうだ。80年〜100年生きるのもザラだそうで、その長寿なところから健康効果も期待されている。また表皮から分泌されるヌルヌルには美容効果もあるのではと研究が進んでいるのだとか。チョウザメと国産キャビアの今後の展開が楽しみだ。

HARUNO CAVIAR VALLEY
住所:静岡県浜松市天竜区春野町川上34-12
問い合わせ先:0539-84-0088

連載「いまおいしい、いま知りたい食のトレンド最前線」
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文=秋山 都

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