カナダ・トロント大学の研究チームが子供を持つ男女およそ4万人を対象に行った調査の結果、シングルファーザーが早死にするリスクはシングルマザーやパートナーと一緒に子育てをしている人たちと比べ、2倍以上高いことが分かった。
公衆衛生に関する専門誌、ランセット・パブリック・ヘルスに掲載された調査結果によれば、研究チームはシングルファーザー871人とシングルマザー4590人、パートナーのいる父親1万6341人、パートナーのいる母親1万8688人を対象に、11年間にわたる追跡調査を行った。その際、25歳未満の実子または養子1人以上と暮らすパートナー不在の成人を「片親(ひとり親)」とした。
調査期間中に死亡したシングルファーザーの主な死因は明らかにされておらず、大半が「その他の死因」と記録されていた。だが、研究チームはシングルファーザーたちが、不健康な生活を送っていた可能性が非常に高いことを指摘している。
パートナーがいる親たちやシングルマザーに比べ、シングルファーザーは果物と野菜の摂取量が少なく、短時間に大量の飲酒をする習慣のある人が多かった。また、外部からの支援を受けないシングルファーザーが多いことも、問題視されている。社会的ネットワークに参加しておらず、社会扶助や育児支援などに頼らないシングルファーザーが多いという。
ただ、一方でシングルファーザーたちはパートナーのいる父親たちに比べ、医師の診察を受ける回数が多いことも明らかになった。早死にのリスクが高まる原因を特定するため、診察の機会を利用することができるかもしれない。
この調査では、追跡期間中に死亡した人の割合が最も低かったのは、パートナーのいる母親たちだった。また、過去の研究では、早死にのリスクが高いのはシングルファーザーではなく、子供と別居している父親、または子供がいない独居男性であるとの結果が示されていた。
増えるひとり親家庭
米国では過去20年間に、父親だけのひとり親家庭で育った子供の数が4倍に増加している。米インスティテュート・フォー・ファミリー・スタディーズ(Institute for Family Studies)の調査によれば、同国のシングルファーザーの大半は、離婚後にひとりで子育てをしている。これに対し、シングルマザーの大半には結婚歴がない。
父親だけのひとり親家庭の方が、経済的には余裕がある。米調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査結果では、2人の子供がいる家庭の世帯年収の中央値は、父親だけのひとり親家庭が4万ドル(約429万円)、母親だけのひとり親家庭が2万6000ドルだった。
ウィスコンシン州にあるマーケット大学の研究者が行った文献レビューの結果によれば、ひとり親家庭で育った子供たちは学業成績が良く、行動やその他の点においても高く評価されることが多いという。だが、薬物を乱用するようになる可能性は、両親がいる家庭で育った子供たちより高いことが分かっている。