イスラエル発交通アプリ「Moovit」が扱う世界1500都市のビッグデータ


同アプリの人気は、有名投資家を魅了した。エレズが50万ドルを出資して立ち上げた同社は、セコイア・キャピタル、アシュトン・カッチャーのサウンド・ベンチャーズ、BMWアイ・ベンチャーズなどから約8400万ドルを調達した。ピッチブックによると、同社の評価額は4億5000万ドルに達したという。前出の投資家たちは、1日あたり5億件生成されるデータポイントを含むムービットのリアルタイム交通ナビゲーション情報に、収益可能性を見出した。

これからムービットは、それらのデータをどうキャッシュにするかを示さねばならない。同社によると、ちょうど今損益分岐点に差しかかっているところで、収益を開示する気はないという。フォーブスの試算では、同社の収益はまだごくわずかだと見ている。しかし、エレズと投資家たち曰く、売上を増加させることは難しくなく、今同社は適切なポジションにいて時勢もよい、と信じている。

世界中の都市は交通渋滞と公害に苦しみ、「スマートシティ」のコンセプトは一層注目されている。あらゆる形態のセンサー、AIやクラウド関連テクノロジーを通じて収集されたデータが、ますます複雑化する都市システムをマネジメントする助けとなるだろう。

ムービットの目論見は、都市が欲する交通ナビゲーションデータを供給することだ。「都市内の移動のしやすさは、世界的な課題だ」とセコイア・キャピタルのパートナー、ギリ・ラーナンは言う。「ムービットの交通ナビゲーションデータは、都市生活の質を劇的に向上させる可能性がある」



ムービットは今100人の従業員を抱え、テルアビブ近くに本社を置き、サンフランシスコ、アテネ、リオなどにオフィスを展開している。エレズと、共同創業者でコンピューター・サイエンティストのロイ・ビック(37)は、さまざまな方法で、各都市をより効率的にするサポートができると確信している。例えば特定のルートに需要が集中したとき、ムービットはバスの増便を提案できる。

「需要と実際の交通情報を見つつ、全てのルートとタイムテーブルを含むシステムのインフラが最適化されているかどうかに気を配っている」とビックは言う。各都市は、住民の公共交通機関の利用状況調査に何百万ドルもかけている。ムービットは、より有用な最新情報を低コストで提供できるという。

何より大切なのは、冒頭に紹介したモンコウスキーのような人々によって世界中で多くのデータポイントが構築されているということだ。駐車事情と交通渋滞があまりにひどいため、「サンフランシスコで運転したくない」とモンコウスキーは言う。ムービットは、そんな彼女のような人たちに「とてもシンプルだ」と言わしめる別の選択肢を提供した。

編集=岩坪文子

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