家族留学から見えてきた、いまこそ考えるべき「家族の組織論」

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家族の組織論を考えるべき時代

いくら相手のことを愛し、理解しているつもりとはいえ、突然バックグラウンドも価値観も違う人が二人集められ、完璧な組織を作っていける人はどのぐらいいるだろう。

先述の通り、私が4年前にmammaを立ちあげた時、組織づくりの点で多くの苦悩を経験した。パートナーと呼べるような存在が生まれては、消えていった。組織に対して反発を持ってやめていくメンバーもたくさんいた。

「自分が必要とされていない感じがする」
「組織の方向性がわからない」
「なんでも言える安心感がない」

その時々で色々な人が色々な不満を口にした。それも、組織を離れなければいけない、最後のタイミングで。早く話し合っていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。どうして、きちんと話し合ってよい組織を作れなかったのか、なんども悔しい思いをしていく中で、いまの形にたどり着いた。

誰かが組織の未来に疑念を抱えた時、腹を割って意見を言い合わなければいけないこともある。どんな未来を目指して、いま私たちが一緒にいるのか、何度もなんども擦り合わせていく。そして、ともに乗り越えた共通体験を積み重ね、前進していく。

夫婦とは、たった2人のメンバーで構成される小さな組織である。そう考えると、これまで述べてきたことはすべて家族にも当てはまる。私は、会社に組織論があるように、家族にも”家族の組織論”があること、そして、それがもっと家族間で議論されていくべきだと思っている。

いま実際に、家族の組織論についての議論も起きている。長崎大学の谷村教授は、生活環境が急速に変化する中で、日々の生活においても、課題発見解決を基本とした家族経営学の意義について述べており、家族管理や家族経営といった考え方が徐々に広がりつつある。

「結婚すればいつか幸せになれるはず」という考えは、「会社は従業員が何もしなくとも自然に利益を出し成長するはず」という考えと等しい。

人々の働き方や仕事に対する価値観はますます多様化し、それに従って家族の形も多様化してきているいま、これまでの一つの組織をより良くするように、わたしたちは家族をより良くしていく努力をしなければいけない。チームとしての家族がより幸せに発展していくような、そんな考え方を明らかにしてくことで、家族はより良いものになっていくのではないだろうか。

私たちは、よりリアルな“家族”と向き合う世代だ。この連載では家族の組織論を考えることで、これからの家族のあり方と向き合っていきたい。

文=新居日南恵

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