「とりあえず飲み会」の人脈づくりに物申す|リンクトイン 村上臣

村上 臣/リンクトイン 日本法人代表


──フェイスブックをはじめ、過去に外国企業が日本市場で成功した際には、パートナーシップがカギになったとよく言われます。村上さんはこれまでヤフーにいらして、日本のIT業界にたくさんのネットワークをお持ちだと思いますが、みんなでそれをやる、という意識はありますか?

もちろんです。どんどんやっていきますよ。最初に触れたように、その先には日本人の働き方を多様化したいという思いがあるので。「働き方改革」の旗を一緒に掲げてくれる人であれば、どなたでもご一緒する機会はあるだろうと思います。

──就任してまだ2カ月ですが、どこから手をつけていきますか?

まずはローカライズをちゃんとしないといけないと思っています。やっぱりまだ奇妙な翻訳が残っていて、ぱっと見でアメリカから来たものだよねっていうのがバレちゃうんですよね。それがバレないくらいには、プロダクトをマーケットフィットしないとダメだろうなと思っているんです。今年の前半くらいまでは、そういう細かいところを調整していくことになりそうです。すでに手をつけ始めているんですけど、それを地道に続けていくっていう。

まあ、今年からリンクトイン再起動ということで、もう一回しっかりと投資をして、日本のやり方で、日本向けのプロダクトにしていくというのは、もう合意できているので。あとはどんどんやっていくということですね。ぼくが最終的にリンクトインに入ることを決めたというのも、その合意があることが大きかったんです。

──どういうことでしょうか?

彼らが探しているカントリーマネジャーの条件に、プロダクトのバックグラウンドが強くあることというものがあって。それを聞いた時に、「ああ、ようやく考え方を改めたんだね」と思ったんです。

一般的に、外資のカントリーマネジャーって営業系の人が多いじゃないですか。要は、「エクセレントなプロダクトをすでに用意してあるから、あとはお前が売ればいいだけだ」っていうのが基本的なやり方なんですよね。彼らからしたら、「日本向けにカスタマイズする」とかっていうのはナンセンスに聞こえる、と。

リンクトインも、かつてはそういう姿勢でした。何年も前から日本展開を模索してきた彼らは、ヤフーに対してもずっと提案しに来ていたんですよ。その時に毎回「そのやり方じゃダメだ」って言って追い返していたのは、他ならぬぼくでしたからね(笑)。

やっぱり、日本とアメリカとではカルチャーが大きく違うじゃないですか。いまだに判子がなくならない国で、商習慣を変えるっていうのは難しいですよ。そんな国で成功するには、やっぱり日本向けにカスタマイズすることは不可欠だと思うんです。

ただ、彼らはそこを学んだんです。そういったことを含めて考えて、戦略とプロダクト改善ができる人物というのを求めていて。その話を聞いた時に初めて、ぼくはちゃんと話を聞こうと思えたんですよね。

選考の過程で、VP全員と話す機会がありましたけど、みんながちゃんとこの部分の大切さというのを理解していることが伝わってきて、逆に「じゃあどう変えればいいんだ?」というのを聞いてくる。そこに本気度を感じたということです。


アメリカでは一人ひとりの仕事の成果が明白で、リンクトインにも書いてある。一方、日本の大多数の社員は、名刺に自分の仕事内容を表す肩書きすら載っていない。

企業はいつまで個人を「囲う」のか?

アメリカでリンクトインが流行ったっていうのは、やっぱり西と東とがだいぶ遠いという地理的な条件も大きかっただろうと思うんですよ。例えば、共通の知人を介して紹介してもらった人と、今度ニューヨークで開催されるイベントで会いましょうという時に、アメリカの場合、最初のやり取りはオンラインなんですよね。いきなりオフラインで会うとか、物理的に難しいんで。

そうした時には、会う前にまず名前検索して、「ああ、今度会う人はこういう人なんだ」という事前情報を得ようとするじゃないですか。その上でスカイプかなんかでミーティングをして、チャットでやり取りを続けて、それでようやく実際に会うわけです。

そうだとすると、前職で何をしていたのかとか、仕事でこういうことを成し遂げた人なんだっていうのが、検索結果としてちゃんと出てきて、わかった方がいいわけですよ。そのようにして、リンクトインの需要が生まれていった経緯があるんです。
次ページ > 「働き方改革」とマッチするリンクトイン

聞き手=丸山裕貴(BNL)、九法崇雄(Forbes JAPAN) 文=鈴木陸夫 写真=西田香織

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事