というのも、公表されているリンクトインの国内ユーザー数は100万人を超える程度。同時期に日本に上陸したフェイスブックの2800万人からは大きく水をあけられているのが現状だ。世界では5億3000万人が利用するサービスに成長しているが、日本上陸は完全に失敗したというのが定説だった。そんな"逆風"の中、なぜ村上がリンクトインに飛び込んだのかについては、村上自身がさまざまなメディアで語っている。
フェイスブックはプライベート、リンクトインはビジネス、という欧米のような使い分けをどう広めていくのか。「ビジネス特化型のSNS」というこれまで日本になかった新しいカテゴリをつくると意気込む、村上の真意を聞いた。
「スキルとロールのミスマッチ」を解消すれば、もっと働きやすい社会になるはず。
──リンクトインを日本で広めていくために村上さんがいま、どんなことを考えているかを率直に伺いたいのですが。
それにはまず、なぜぼくがヤフーを飛び出してリンクトインへやってきたのか、という話からするのがいいんじゃないかと思うんですけど。
いま、日本ってなんだか暗いじゃないですか。閉塞感に満ちている。労働人口は減るし、政治を見ても、おじいちゃんおばあちゃんの方を向いた施策ばかり。若い子は一体どうすればいいんだっけ、みたいな感じで。そう考えた時に、もっといろいろな働き方が、普通にできたらいいんじゃないかと思ったんです。
人が会社を辞めるのって、自分が持っているスキルと会社から求められるロールとがズレた時だろうと思うんです。「こんなに頑張っているのに成果が出ない。マネジャーからも認められない」。そう思った結果としての行動ではないか、と。
この「スキルとロールのミスマッチ」というのが最大の不幸なんですよ。なぜなら、スキルとロールが合わないというのは、あくまでこの場所でだけ見ているから起こることにすぎなくて。別の場所に行きさえすれば、活躍できる人はたくさんいるはずなんですよね。だからまずは、こういったものを可視化して、その上で両者をつなげることができれば、みんながハッピーになれるのではないか、と。マッチングというのは、まさにインターネットが得意とするところですし。
日本は長らく「転職しない国」だと言われてきて、その文化はもう30年近くも変わってないんですよ。そのカルチャーを変えることで、日本を覆う閉塞感を打破したい。そういう思いを持って、ぼくはリンクトインに来ることにしたんです。
もちろんそれだけじゃなくて、ビジネス的に見ても、人材市場って潜在層を含めて見れば1兆円規模くらいあると言われていて。社会的なインパクトという意味でも、この領域は日本社会に残された数少ないフロンティアだというふうに、ぼくの目には映っています。
──いま、「働き方改革」という言葉を聞かない日はないくらいに、村上さんと同じ問題意識を持っている人が少なくないように見えます。
安倍首相が言う「働き方改革」というのも、まさにそういうことだと思うんですけど、ここ数年で、官民双方からこうした動きが盛り上がってきているというのはありますよね。だから、「なぜいまこのタイミングなのか?」と問われれば、やはりこの「働き方改革」の流れがあることは大きいです。
転職というのは、日本人にとってはやっぱり重い。いろいろと引きずっているものがあるじゃないですか。だから、そんなに簡単にカルチャーが変わるとは思ってないです。でも一方で、ちょうどいま、世の中が大きく変わりそうな予感もある。これはロジックではなく、感覚的なものです。こういう時、ぼくはだいたい直感で動くので。