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国際政治学者の三浦瑠麗氏

ニューススイートとForbes JAPANが、伝える力をテーマに各界で活躍する著名人にインタビュー。多様性を何より重視し、柔軟かつ冷静な視点でものごとの本質を見極めていく力は、どのようにして養われたのだろうか。注目の国際政治学者、三浦瑠麗に議論を有意義な方向に導くコツについて聞いた。


たとえば、あるビジネスパーソンが自分の提案をどうしても成立させたいと考えたとき、根回しという手段を取るケースがあります。先に根回しを済ませて決定権をもつ役職者の同意を取り付けておけば、会議が紛糾することはありません。

もちろん、既定路線で話を進めたほうがいいケースもあります。しかし、いつもこのやり方では会議が結論ありきで議論が発展しない。議論する風土がないと、ついコメントも連想ゲーム的になってしまい、テーマによっては生産性のある方向に向かっていかないことがあるのです。結果的にその企画のもつポテンシャルの高さに誰も気づかず、ブラッシュアップされないまま商品化されてしまう。あるいは思いつきコメントでつぶされてしまう。せっかくのいいアイデアも実を結ばなければ何の意味もありません。自分には説明する力がないと思い込んでいる人の典型的な行動パターンのひとつだと私は思っています。

こうした人は話す技術に欠けているのではなく、メンタルのほうに問題がある場合も多い。議論というのは対立する意見をねじ伏せるものではなく、建設的な方向に積み上げていくものだと考えてみてはいかがでしょうか。相手が好戦的な態度に出ても感情を抑え、あなたの言うことはわかりました、でも自分はこう思うという論点で切り返せばいいのです。

知識層にありがちな、自分の主張だけが正しいという思い込み

私は安全保障の専門家として討論番組に呼ばれることが多いのですが、その場で常々感じるのは、議論が白熱しているようでいて、Aという意見と、Bという意見が実はまったく噛み合っていないということです。

論客と呼ばれる人は、政治家であったり、学者であったり、それなりに社会的な地位、権威をもっています。彼らは揺るぎない自説を用意してくるので、自分の主張が正しいと確認されることが、いま論じている事象がより良い方向へと導かれることよりも優先されてしまうパターンに陥りやすいのです。

安全保障の問題に限らず、世界には私たちの価値観や常識が通用しない国もあります。私たちは多様な社会を生きています。どんな論点でも正解がひとつしかないということはあり得ないのです。こういう時代に必要なのは、自分とは考えの違う人の意見をきちんと聞き、ときに受け入れる器を大きくすることではないでしょうか。

レゴブロックで例えるなら、完成品を議論の場にもち込み、そのつくり方をいくら説明されてもそこから伸びしろがあるわけではありません。さまざまな意見を集約させて、みんなでひとつの形に仕上げていこうという発想をもつことが大切なのです。その過程で痛烈な批判を浴びたとしても、結果として建設的な議論に発展していけばそれでいいのです。伝えようとする思い、聞こうとする好奇心があれば、いつか相互性が生まれ、課題解決の道筋ができる、私はいつも対話の可能性を信じて議論に参加しています。

Promoted by ソニー text by Hiroshi Shinohara | photographs by Shuji Goto

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