その傾向を明確に示す一例が、米高級皮革ブランドのコーチだ。今年3月、過去に大きな人気を博した「シグネチャー」の新シリーズを発売する。シグネチャー・シリーズは一時、小売部門の世界全体の売上高の70%を占めた。だが、あらゆる商品に「C」のロゴが付けられるようになった結果、高級品の趣が失われ、同時にブランドのイメージが損われることにつながった。人気の低下とともに、売上高も落ち込んだ。
コーチのジョシュア・シュルマン社長兼最高経営責任者(CEO)は2月上旬、ロゴをデザインしたバッグを復活させることについて、「慎重に、規律ある取り組みを進めていく」考えを強調した。
ただ、一方で同CEOは、新コレクションについて、メディアにも卸売業者にも、「非常に好評」だと付け加えた。業界全体を見ても、およそ400億ドル(約4兆2700億円)規模の高級ハンドバッグ・アクセサリー市場の世界的な売上高の伸びは、「高級ブランドのロゴ」入りのデザインを取り入れた商品が後押ししている。
コーチ 18年春夏コレクションで発表されたシグニチャーのバッグ
コーチのほかファッションブランドのケイト・スペードなどを擁するタペストリーのビクター・ルイスCEOは昨年11月、市場でロゴ入りのデザインが人気を高めていることから見ても、「“ブランド”が依然として重要であることは間違いない」との見解を示した。昨年買収したケイト・スペードについても今後、ロゴを入れた商品のラインを拡大する機会を探る方針だとされる。
シュルマンCEOはまた、「われわれにとって非常に興味深いのは、アウトレットでの需要が増えているだけでなく、パリのル・ボン・マルシェやニューヨーク五番街のサックス・フィフス・アベニューといった各地の老舗百貨店からも、ロゴ入りの商品を仕入れたいとの連絡が多いことだ」と述べている。
他ブランドも「ロゴ入り」を強化
多数の高級ブランドを傘下に持つ仏LVMHグループは、ニューヨークを拠点とするファッションブランド、シュプリーム(Supreme)とのコラボレーションにより、ロゴをデザインしたスウェットシャツやデニムなどのアイテムを発売した。これは、2017年のLVMHのファッション・皮革商品部門の本業の売上伸び率の13%に貢献したという。
2014年に米市場で販売するロゴ入りの商品を大幅に削減すると発表したアバクロンビー&フィッチも、需要の増加に伴い再びロゴ入りのアイテムを増やしている。同社のフラン・ホロウィッツCEOは昨年11月、メンズ部門ではロゴ入りのシャツがある程度、業績改善に貢献したと説明していた。