経済産業大臣と大学3年生が語る「働き方改革」への違和感と期待

左から、Forbes JAPAN 編集次長兼WEB編集長の九法崇雄、経済産業大臣の世耕弘成

政府主導の「働き方改革」を機に働き方をめぐる議論は様々な場所で交わされているが、その主導者である経済産業大臣、そしてこれから社会に出る大学生はこの状況をどう見ているのか。

2月15日、一般社団法人at Will Work が主催する「働き方を考えるカンファレンス2018」が虎ノ門ヒルズフォーラムで開催され、8つのテーマで計55名の登壇した。クロージングセッションでは、「働き方の未来と展望」というテーマのもと旗振り役の世耕弘成大臣が登壇(対談相手:Forbes JAPAN 編集次長兼WEB編集長の九法崇雄)。さらに、大学生が率直な意見を展開した。

必要なのは、企業側の「働かせ方改革」


経済産業大臣の世耕弘成

現状、長時間労働の是正に注目が集まる「働き方改革」だが、それを推進する経済産業大臣の世耕弘成はここへの「違和感」を突きつける。

「過剰労働を取り締まる制度はもちろん必要だが、それだけでは国力が低下してしまう。短時間で生産性を高める“濃密な働き方”の実現が求められている」

すると個々のビジネスパーソンの能力向上が課題となるが、そこで世耕が推進しようとしているのは、会社勤めをしてから必要に応じて大学に入り直し、また仕事に就く……というように教育と仕事を循環するリカレント教育だ。

「人生100年時代」では状況に応じた学び直しや転職が求められるが、いまの日本では学んだことや身につけたスキルが職場での評価につながりづらい。一方欧米では、各職場での実績や身につけたスキルが、リンクトインなどでデータベース化されているため、転職時にも評価されやすい。個人が学んだことが次の仕事に活かされ、それを第三者が評価できる仕組みが整っているのだ。これを受けて、世耕は今後の課題を次のように宣言した。

「企業、そして社会全体が長時間労働を辞めてジョブディスクリプションを明確にしていくべき。いま求められているのは、『働き方改革』だけでなく、企業側の『働かせ方改革』だ」

「人事にはポジショントークをして欲しくない」

では、これから社会で輝くであろう2人は、「働き方改革」の議論をどう感じているのか。

at Will Work代表の藤本あゆみをモデレーターに加えたセッションでは、東京大学法学部3年生の2人が登壇。弁護士資格を取得した後、それを生かして起業したいという田本英輔と、小学6年生の頃から国家を支える官僚になりたいと思って東大に入学したものの、民間企業から社会問題を覆そうとするイーロン・マスクに憧れて近々シアトルに留学するという白川亜祐旭だ。


左から、Forbes JAPAN 編集次長兼WEB編集長の九法崇雄、東京大学法学部3年生田本英輔、同白川亜祐旭、一般社団法人at Will Work 代表理事の藤本あゆみ

世耕と同じく、長時間労働の是正にフォーカスが当たりがちな「働き方改革」に違和感を覚えるという田本は、効率的かつ満足に働くためにこそ、裁量労働制よりも「やりたい仕事を見つける」ことが必要だと語る。

「そもそもやりたいことにフォーカスできなければ、長時間労働が規制されてもあまり意味がないのでは。主体的な働き方について、もっと具体的に議論できる場があればいいと思う」

また、白川は「人事担当者のポジショントークは聞きたくない。企業以外でも働ける選択肢がたくさんある時代だからこそ、人事の方にも自身がその会社で働くのがベストなのかどうかを考えて、自分の働き方に自信を持った上で就職を薦めて欲しい」と語る。

白川が望むのは、企業以外で働く選択肢が増えた昨今こそ、採用担当者にも一個人として就活生と向き合ってほしいということ。これから社会に出る若者も仕事と真剣に向き合おうとしているからこそ、先人である大人はその良いところも悪いところも包み隠さず見せあうべきだということだ。

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左から東京大学法学3年生田本英輔、同白川亜祐旭

「働き方改革」が本当に目指すべきは、単純な過剰労働の規制ではなく、各人が満足した上で国を豊かにする結果を出すことのはず。世耕・田本・白川という立場の違う3人の「働き方改革」に対する思いから見えてきたのは、個人のやりたいことと組織単位の効率化が一致したときにこそ、本当に生産性の高い労働が実現するということだ。

最後に藤本から語られた「目指すべきは、一人一人が働く意味を見つけること。それをめぐる議論がもっとされなければならない」ということが、いま一番求められているのかもしれない。

編集=フォーブス ジャパン編集部

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