経済・社会

2018.02.21 10:00

ユニコーン社数で日本を上回る韓国、官民あげてベンチャー支援


Lotte Acceleratorでは全部で4つのプログラムを提供している。6ヶ月間のアクセラレータープログラムの「L-Camp」、マイクロVCと呼ばれる新興VCとのマッチアップを図る「L-Office」、そして自社でのベンチャー投資と社内ベンチャー制度だ。

1stバッチ(期)となった2016年春のL-Campでは16チームが参加。現在までに42チームが参加している。デモデイはオープンに行われ、テック系のチームが割合としては多い。ビジネス・税務コンサルやファイナンシャルアドバイザリーサービス、AWSやIBMのサービスのようなITインフラの充実に加え、Lotteグループとのコネクションがスタートアップにとって大きなインセンティブになっているという。

社内ベンチャー制度はチームビルディング等の関係から年に1チームが選抜される仕組みだ。優秀な社員が抜けてしまうリスクもつきまとうが、新たなイノベーションやアイデアを生み出すために、この仕組みを活用し社員のモチベーションを高めることに努めている。

カード会社ならではの審査基準をコワーキングスペース入居にも採用

一方、Hyundai Cardはアクセラレーティングに特化。ビルの7フロア全面を活用した大型コワーキングスペースを昨年オープンした。うち5フロアをチームでも個人でも使える「STUDIO BLACK」、2フロアをFinTechスタートアップを中心とした「Finβ」で構成している。


STUDIO BLACKのラウンジ。信用取引のクレジットカード会社運営ということもあってか、セキュリティは強固。ビル1階のレセプションにはゲートが設置されており、IDカードなしでの入館はできない。共有物の外部への持ち出しも禁止。取材時、写真撮影の許可が下りなかった。(写真:Hyundai Card提供)

申請後、選考プロセスを経て決まるというSTUDIO BLACKの入居チームは、韓国、アメリカ、ドイツ、イスラエル、日本と国際色豊か。こちらは1ヶ月単位での契約が可能だ。一方、Finβは招待制による10チームが1年半の利用期間真っ最中。入居チームにはデモデイのチャンスが与えられ、Lotte同様、Hyundai Cardとのつながりを期待しているスタートアップが大半。協業にいたったケースも存在するという。

「オープンイノベーションを成果につなげていくために、まずは目の前のチームと協力していくことが大事」というHyundai Card自体、直接投資は行わないものの、定期的にベンチャーキャピタルと引き合わせたり、週に数回イベントを開いたりと、多くの人との接点創出に力を入れている。

ベンチャー支援や新規事業創出等に力を注いでいる理由に、経済革新のためには彼ら財閥の力をうまく活用する動きがあるだけでなく、近年、世間を賑わすニュースが相次いだことで、社会貢献を暗に求められる節があるためと言われている。最近では大手企業やソウルメトロ(地下鉄)等の公的機関もオープンイノベーションに積極的に取り組んでいるという。

20代の失業率が増え、必然的に起業にチャレンジする機会が増えているが、こうした政府や財閥、大手企業等のフォローアップが整っているのは心強い。インバウンドにも積極的で、協業することへのリスクよりもメリットを互いに感じている。スタートアップエコシステムは継続のもとに成り立つのだ。

連載「アジアの最新スタートアップ事情」
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文=木村忠昭

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