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2018.02.20

拡大するインドの所得格差、首相だけを責められない理由

Photo by Sushil Kumar/Hindustan Times via Getty Images

インドの富裕層がますます多くの富を蓄えるなか、貧困層は一層貧しくなっている。中国をはじめとする世界の新興市場の中でも、インドは特に所得格差の拡大が目立つ。過去40年間の政府の規制緩和政策とグローバル化が富裕層に利益をもたらしたことは間違いないが、その恩恵は貧困層には届いていない。

世界の富の格差に関する1950年代から2014年までのデータをまとめた報告書「2018 World Inequality Report」によると、1980年代前半に全体の約7%を占めていたインドの所得上位1%の所得は、2014年には22%に増加。一方で所得下位50%の所得は、全体の約23%から15%に減少した。

ただ、それでもこうした状況について責任を問われるべきなのは、ナレンドラ・モディ首相らインドの改革推進派だけではない。モディが政権の座に就いたのは、同報告書の調査対象期間が始まって以降だ。

1980年代までの同国を率いていたのは、社会主義者たちだ。彼らは国民の識字率の上昇と健康状態の改善を実現できず、グローバル化に対応する準備を整えることができなかった。これらの点におけるインドと中国の変化の違いは、下表の統計からみても明らかだ。


出典:NationMaster

米ロングアイランド大学ポスト校のウダヤン・ロイ教授(経済学)は、「インドはかつて非常に社会主義色の濃い国だったが、1991年前後には多くの規制が撤廃され、機会を活用する用意ができていた人たちには多くの成功の機会が与えられた。だが、国民の教育や栄養状態の改善、医療の問題に取り組み、大きな成果を上げた共産主義の中国とは異なり、インドはそうした取り組みを実施していなかった」と説明する。

「1991年に経済改革に乗り出す以前から、インドには 非常に大きな不平等が存在していた。そのため改革によって成功の機会を拡大されたとき、その恩恵を受けることができたのはごく一部の限られた人たちだけだった。残る人たちは教育を受けられず、健康状態も悪く、生産性も低いままだ」

現政権に問われる責任

就任前にすでに拡大していた国内の貧富の差についてモディ首相が批判されるべきではないとしても、責任を問われるべき問題はある。インドの子供たちが、北朝鮮の子供たち以上に飢えていることだ。国際食料政策研究所(IFPRI)が昨年10月に発表した「世界の飢餓指標(Global Hunger Index)」によると、インドは調査対象の119か国のうち、北朝鮮より7ランク下の100位だった。

また、モディ首相の就任以降、インド経済は「好調」であり、生活の改善を実感しているという国民の割合は低下している。現政権はこの点についても批判されるべきだ。

投資家たちは、インドの貧困と拡大する所得格差に細心の注意を払う必要がある。改善されない貧富の差と腐敗、縁故主義は、経済成長と好調な株式市場にとっての最大の脅威だからだ。

編集=木内涼子

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