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2018.02.19

勃興する中国デジタル音楽市場「MAU7億人」のテンセントが主導

pecaphoto77 / shutterstock.com

中国のテンセントは1月末、同社の音楽部門「テンセント・ミュージック・エンタテインメントグループGroup (TME)」がソニーと共同で音楽レーベル「リキッドステイト」を設立したと発表。

リキッドステイトはエレクトロニック・ダンスミュージック(EDM)のアーティストを手がけ、世界的DJのアラン・ウォーカーや韓国のJunkillaなどの第一線のアーティストのプロモーションも行っている。

TMEは今年、香港市場に上場すると噂され、10億ドル(約1130億円)規模の資金を調達。企業価値は100億ドルに上るとみられている。テンセントは傘下に「QQ music」や「Kugou」「Kuwo」といった音楽ストリーミングアプリを持ち、合計で7億人の月間アクティブユーザーを抱えている。

中国の音楽分野でもう一つの勢力が、ゲーム企業の「NetEase(網易)」を母体とするNetEaseCloud Music(NECM)だ。同社は約3200万ドルを投じ、インディーズアーティストの育成を開始するとアナウンスした。NetEaseは女性アイドルグループの「SNH48」のマネージメントも行っている。

「中国のネット企業はオリジナルコンテンツの重要さに気づき、独自のコンテンツの発掘に務めている」と投資企業「S.Capital」の担当者は述べた。

調査企業「iiMedia」は中国のEDMリスナー人口が来年には4億人規模に到達すると見込んでいる。Zhao Leiという北京出身のインディーアーティストは300万人近いフォロワーをアリババやテンセント、NetEaseのストリーミングアプリで持ち、ファンたちから直接チップ(投げ銭)をもらっている。

ネット企業がインディーアーティストの育成に力を注ぐ背景には、経済的メリットと同時に使い回しの良いコンテンツが入手できる利点がある。大手レーベルに所属する世界的スターと契約を結ぶには膨大な資金が必要で、コンテンツの自由度も低い。

「今日頭条」運営元も音楽分野に

「インディーアーティストのほうが、大手レーベルのアーティストよりも多様なマネタイズ手段が考えられる」とPwCの担当者は話した。

中国のデジタルミュージック市場では、テンセントが大きな存在感を持つが、このところ人気を博しているのが「Dou Yin(抖音)」という無料の音楽アプリだ。調査企業「App Annie」によるとDou Yinは先日、中国のiOSのアプリランキングでWeChatを抜いて1位に立ったという。

Dou Yinを開発したのはニュース配信アプリ「今日頭条」で知られる北京の「Bytedance」だ。Bytedanceは昨年、別の音楽アプリ「Musical.ly」を10億ドルで買収していた。

「中国の音楽配信市場では、まだ明確な勝者は決まっていない。巨大なユーザーベースが築ければ、どんな企業にでもチャンスが残されている」と投資企業「Gobi Partners」の担当者は述べた。

編集=上田裕資

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