筆者はこの会議に参加し、ロシアの技術予測活動を興味深く聞きました。特に、「Demand for new jobs and skills(求められる職種とスキル)」というセマンティック・マップ(意味マップ)を活用しながら、戦略的に将来のロシア教育にフォーサイトを活かすという紹介はとても面白いものでした。
将来必要なスキルと能力が定義できれば、政府は教育システムのすべての段階におけるカリキュラム開発にこの情報が活用でき、教育システムの向上により、ロシアの競争力を高めるというのです。
[図1]将来求められる職種とスキルのセマンティック・マップ。線が集中しているところが、技術的ニーズが高い職種。出所:ロシア国立高等経済学院統計・知識経済研究所 フォーサイトセンター、iFORA™ Big Data分析システム使用
フォーサイトを行う機関は、各国にあります。日本では、1998年に科学技術省付属研究機関として発足し、その後、科学技術省直轄の国立試験研究機関に。現在は、第11回科学技術予測調査を行い、次期科学技術基本計画に貢献するための活動をしています。
昨年11月に国際ワークショップ、今年1月には2040年の将来についてのビジョンワークショップを実施しており、そららの内容の一部は、2020年の次期科学技術基本計画にその内容の一部が反映される予定です。しかし、いろいろな活動をしていて、約20年の歴史があるにも関わらず、これらの技術予測が日本の将来の教育施策へ直結していないと感じることがよくあります。
ワークショップを重ねて未来を考えるロシア
ロシア政府は、2013年の人材不足調査の結果、スキルに関して戦略的イニシアティブを発足。プロフェッショナル教育によって、ロシアの労働力の生産性をあげ、新規・新興産業との仕事によって、新しい雇用を創出するという目的を掲げました。
その目的の下、「Skills Foresight 2030(2030年のスキル予測)」というプロジェクトを立ち上げ、20〜30年先のスパンで将来どうなるのかを予測するフォーサイトの手法を使ったのです。中国、ドイツ、インドなどをはじめとする海外のフォーサイトの専門家も招かれ、新興の業界を含む25の業界で、主要プレイヤーを含め、ワークショップを実施しました。
その中で、ロシア国内かつグローバルで、どのような変化が社会的・技術的に起きるのか、それらはどのように雇用や国民のスキルに関係しているのか──世界的なベストプラクティスからロシアは何を学び、どう未来に活かしていくのかを議論し、予測しました。