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15番ホールから見える海岸は、1916年のイースター蜂起の際、アイルランド義勇軍の戦士だったロジャー・ケースメントがドイツから輸入した武器を携えて潜水艦(いわゆるU-boat)から上陸した場所だ。彼はイギリスの外交官を務めた経験を持ち、ナイトの称号まで取得していたが、この事件によって反逆罪の罪で逮捕され、ロンドンにて処刑された。さらに16番ホールから17番ホールへ続く海からは、多くの船が活発に行き交う様子が見える。1588年にはスペインの無敵艦隊・アルマダが通りかかったこともあるらしい。いやはや歴史の宝庫である。アーノルド・パーマーが最近設計した、いわゆるニューカマー系のアメリカン・ゴルフコースだと勝手に思っていた浅学の自分を猛省した次第である。

アーノルド・パーマーといえば、彼の名前に由来するファッションブランドも有名だ。ブランド立ち上げの際は、ロゴを決めるためにパートナーや弁護士が侃々諤々議論したものの、なかなかいいアイデアが出ず会議が紛糾したそうだ。その時、パーマーは雨の降りしきる外の景色を眺めていたが、貴婦人のような綺麗な女性が車から降り、カラフルな傘をさしたのを見て、思わず「how about an umbrella?(傘はどうだ?)」と口にしたという。途方に暮れていた他のメンバーも「それはいい!」と同意し、特許を調べたところ、運良く誰もトレードマークとして出願していなかった。こうして、よく知られている可愛らしいカラフルな傘のイラストが、晴れてブランドロゴとして正式採用されたという落ちがついている。

いずれにしても、歴代5位となるプロ通算62勝、特にマスターズで4勝を挙げた経歴をもつアーノルド・パーマーは、ニックネーム通り「The King」である。アイルランド南西の風光明媚な場所を、よくここまでの素晴らしいコースに設計してくれたと、感謝しないではいられない。


こいずみ・やすろう◎FiNC 代表取締役CSO/CFO。東京大学経済学部卒。日本興業銀行、ゴールドマン・サックスで計28年活躍。現役中から、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢・発起人、TABLE FOR TWO Internationalのアドバイザーなど社会貢献活動にも参加。お金のデザイン社外取締役、WHILL、FC今治のアドバイザー。

文=小泉泰郎

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