フォーブス ジャパン編集部 エディター




──いつ頃から、起業について考えられていたのですか?

小杉:3〜4年くらい前ですね。春季キャンプ開始の前日に行われるミーティングが、起業について考える大きなきっかけになりました。

当時、ビジネスのことは全く知らず、野球だけのことを考えて生きていたのですが、ミーティングには南場智子さん(DeNA代表取締役、横浜DeNAベイスターズオーナー)、池田純さん(横浜DeNAベイスターズ前球団社長)、営業の人などが来ていて、観客動員数、座席稼働率などの数字を出して球団経営の状況について話すんです。

もちろんキャンプの概要について話した後ですが、多くの選手にしてみたら、「これから地獄のようなキャンプが始まるのに、一体何の話をしてるんだ……」といった感じだと思います。ただ、自分にとっては話の内容がすごく面白くて、わくわくしたんです。

チームの順位は5位、6位が続いているにもかかわらず、観客動員数は年々増えている。シンプルに、その理由を知りたいと思ったんですよね(笑)。それから会社の経営、ビジネスについて興味を持つようになり、ビジネス書を読んで知識をインプットし、起業への準備を進めていました。

──先日、元プロ野球選手の方に話を聞く機会があったのですが、その方は戦力外通告を受けた後、野球以外にもう一度人生をかけてやりたいと思えることを見つけるのが大変だったと言っていました。小杉さんは選手時代から起業について考えていたからこそ、今回思い切った決断をできたのでしょうか?

小杉:そうですね。起業について考える時間が4年くらいあったのは大きかったと思います。あと個人的に思うのが、「セカンドキャリア」という言葉ってカッコよすぎる気がするんですよね。この言葉って結局のところ、転職と同義じゃないですか。

今まで積み上げてきたキャリアと同じものを別の場所でもう一度、築いていくのはすごく難しいことだと思うんです。でも転職と考えたら、多くのビジネスパーソンと同じで「次は何をしようかな」という感じで、次の仕事も決めやすくなる。

だから、セカンドキャリアと考えるのではなく転職と考えたらいい。自分はずっと転職という気持ちで起業について4年くらい考えていたので、引退のタイミングで思い切って一歩踏み出せたのだと思います。

人が生み出す熱量、体験はテクノロジーでは代替できない

──なぜ、イベントの企画や制作、PR企画などといった事業を手がけることにしたのでしょうか?

小杉:人と会って話を聞いたり、本を読んだりして、自分なりに考えてみた結果、今後は人と人との絆が生む熱量や体験といったキーワードが重要になると思いました。

最近、AI(人工知能)やロボティクスによって人の仕事が奪われると言われていますが、AIやロボティクスが勝てないのは人と人との絆が生む熱量や体験。CDやDVDが売れなくなってきている一方で、音楽フェスやイベントの動員は増えているという事実は、それを裏付ける証拠でもあると思っています。

だからこそ、自分は人と人とが触れ合えるイベントを企画、開催したり、いろんな人が集まるコミュニティーを作ったりして熱量が高い場を生み出していくことをやっていきたい。プロ野球選手だった頃、横浜DeNAベイスターズが仕掛けるイベントはどれもすごいなと思いましたし、観客の熱量が高いんですよね。

そこから影響を受けた部分は大きいですが、人と人との絆が生み出す熱量、同じ時間をつくって共有する体験はテクノロジーでは代替できない領域だと思いますし、そこに事業としての勝機があると思いました。

文=新國翔大 写真=小田駿一

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