スウェーデン移住を決めた3つの理由
Skypeでの面接では、予想通り、「何故スウェーデンなのか? 本当に引っ越す気があるのか?」を真っ先に聞かれ、専門性よりも動機に質問が集中した。私は、大きく2つの理由にポイントを絞り、シンプルに伝えた。
ひとつは、子供のため。専業主婦はわずか2%と言われるスウェーデンでは、政治家の約半分が女性、企業でも女性の幹部や管理職は珍しくなく、出産や育児休暇を経ても復職は当然可能。加えて、たとえ医学部であっても教育費は無償だ。
また、家から徒歩圏内に森や湖があり、生き物や植物と触れ合う環境もある。ただ、子供が年頃になった時に都会に近い方がよいとも考え、首都であるストックホルムが、文化的刺激もありながら自然も身近にあり、私たちの理想とする環境だと伝えた。
冬は凍った湖でスケートができる。家から車で20分圏内にこのような湖が5か所もある。
ふたつめは、妻のため。妻は保険会社に勤めていたが、復職後に「子どもとの時間」が充分にとれないと考え退職。その後、大学の通信課程で児童学を学び始めたが、卒業後の働き方に不安が残っていた。
そこでワークライフバランスが整っているスウェーデンなら職を得ることができる、妻の望むようなキャリアも手に入ると伝えた。語学の面で最初の数年は苦労するはずだが、リカレント教育が浸透しているスウェーデンでは極めて現実的なプランと言えた。
もう一つ、オマケのような理由としては自分自身のためというのもあった。当時働いていたBMWジャパンの仕事が楽しくなってきたタイミングで辞めることはなかったのだが、ワークライフバランスと妻と娘の幸せを考え最適な選択肢をとることを決意した。
私は最後に先方の企業にこう伝えた。「日本社会も確かに変わりつつある。だが、我々が望む社会になるまでには、直感的には数10年はかかると思っている。日本社会が変わるのを数10年待つのか、それとも我々自身が数年で変わり、望む社会へ飛び込むのか。我々の選択は後者で、スウェーデンで骨を埋める覚悟はできている」
このストーリーに説得力があったようで、すぐに最終面接兼現地視察の切符が送られてきた。とんとん拍子で話は進み、帰国後すぐに契約書を交わし、労働許可の申請や購入したばかり日本のマンションを売却する手続きも始めた。
次回は実際にスウェーデンに移住してどう感じているのか、その正直な感想をお伝えしたい。