「気前の良さ」がビジネススキルに 次の時代に活躍できる女性像

漆紫穂子/ 品川女子学院 理事長


谷本:中高生が社会的スキルを身に着けていくために、大人はどのような声掛けをしていくべきでしょうか?

:街を歩きながらも、不便に思ったことや、もっと便利な仕組みはないだろうかと考える視点を持つこと。タクシー乗り場の動線であったり、コンセントのタコ足配線だったり。困りごとに愚痴をこぼすのではなく、解決する方法を自分で考え行動するよう促すのが大人の役割だと思います。

デザイン思考にもつながりますが、「なんでこうなっていると思う?」「どうしたら改善するかな?」と問いかけること。子供たちから出てきた解決方法は、合っていても合っていなくてもいいのです。

「気前の良さ」がカギに

谷本:「考える」というプロセスが大事ということですね。「人の役に立ちたい」という価値観はどのように養われるのでしょうか?

:とても身近なことですが、お手伝いが有効です。お手伝いは社会参画の第一歩。役割を担うことで自己肯定感が高まります。また、お手伝いは、いじめの抑止にもなります。お手伝いは人の役に立って嬉しいことで、いじめは人が困ったら嬉しいこと、つまり対義語なのですね。小さな訓練を積み重ねることで、「社会貢献」が自分ごとになっていくのです。

谷本:親世代とはモチベーションになるものが違う。目の前にを吊る“にんじん作戦”をするにも、にんじんを何にすべきかはきちんと考えた方が良さそうですね。

:少子化で競争機会が減り、物質的に恵まれた社会の中では、出世欲や所有欲が低い子が多いので、従来の価値観をあてはめることは難しいです。一方で、彼女たちは「シェアする」ことが得意な世代。当校では生徒がそれぞれiPadを所持しています。昔は、“良いノート”は自分のためにとるものでしたよね。でも今は、良いノートをSNSで全員に共有する子もいます。

これからは「集合知」の時代。最初の発信者がプラットフォームになって、そこに情報が集まってくる時代です。フェイスブックの始まりもそうでしたよね。みんなの“便利”のために始めたら、いつのまにか莫大な集合知になった。

谷本:子育て中の方や、未来の親たちに「こんな子に育てなさい」と助言するとしたら?

:これから活躍できるのは「気前のいい子」。情報や人脈をケチらないこと。「情けは人の為ならず」という言葉もありますが、ネット時代は人のためにしたことが、もっと早く自分に戻ってくる時代です。そしてシェアするとき、自分の弱みもシェアすること。助けてもらうことは恥ずかしいことではありません。誰かが助けてくれることで、その人自身も育つ。みんなの得意が回っていく循環の中から、大きなエネルギーが生まれていくのです。

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漆 紫穂子(うるし・しほこ)◎1925年創立、中高一貫の品川女子学院の6代目校長。かつての改革では入学希望者が60倍、偏差値が20上昇。「28プロジェクト」は生徒たちの心にスイッチを入れた。著書に『女の子が幸せになる子育て』など。現場教員歴30年以上の講演が大きな反響を呼んでいる。

構成=ニシブマリエ 写真=國分蘭

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