復活の三菱、新エクリプス・クロスでSUVの牙城に挑戦

エクリプス・クロス


エクリプス・クロスのエンジンは、1.5Lターボ付き4気筒エンジンのみで、CVTが組み合わされている。154psを発揮するエンジンは驚くほどパンチが利いていて、ターボラグがほとんどなく、スロットル・レスポンスが速い。

ラバーバンド・フィーリングと高回転域でのノイズが気になるCVTは、決して僕の好みではないのだが、パドル・シフトと8速バーチャル・ギアの組み合わせたこの最新CVTは、1.5Lエンジンを引き立て、ノイズもわずかだし、なんの問題もなくパワーを伝達する。



ステアリングは適度な重さがあり、雪でトラクションがほとんどないコース上をしっかりと走行するための最適なトルクを4WDシステムが配分してくれるので、ハンドリングは意外に軽快だ。

こんな雪上での試乗は、スローモーションの世界。高速道での試乗は当然、100km/h位で運転するとしても、雪の上での最高速度は約50km/h。コーナリングではつま先立ちで歩を刻むように、絶えずハンドリングを微調整しているが、むずかしい状況でも、かのS-AWCが小さなミスもカバーしてくれる。

さて、与えられた試乗時間を終えると、日本のレジェンドに同乗といううれしいお誘いを受けて、冷たい雪の上で胸が熱くなった。過酷なパリ=ダカール・ラリーに出場すること21回、そして2度の優勝を飾った三菱のチーフ・テスト・ドライバー、増岡浩氏がみずから、その磨き抜かれたドライビング技術と才能で、エクリプス・クロスがどれだけの性能を発揮できるかを披露してくれたのだ。

絶対に不可能だと思える角度でバランスを保ちながら、クルマがヘアピンを曲がる時、目の前に絶えず見えるのは、コーナーの内側だ。増岡氏がステアリングを左右に微調整しながら進むと、エクリプス・クロスは横滑りするようにコーナーを出ていく。 何事もないように全輪を制御する4WDを備えたこのSUVのバランス性能に感嘆した。難曲「チゴイネルワイゼン」を奏でたバイオリン奏者のように泰然としている。グリップがよいので、ダートでも泥道でも、氷上でもターマックでも、そして一般道でも気持ちよく走れる。

エクリプス・クロスはすでにヨーロッパでは発売されており、3月には日本で販売開始となる。FF仕様車は260万円で4WD車は310万円ほどになるという。でも、悪い事は言わないから、ぜひとも4WDを選んで欲しい。数十万円を投資すれば、エクリプス・クロスは世界で最高の4輪のトラクションと安全性を保証してくれるはずだ。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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文=ピーター・ライオン

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