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2018.02.10

法律はいかにして「アスリートの性的虐待」を防げるか

米国体操連盟の元チームドクター、ラリー・ナサール(Photo by Scott Olson/Getty Images)


ナサールの罪を世間に知らせた『インディアナポリス・スター』紙の勇敢な報道は、過去20年間に行われた性的虐待被害の訴えは数百に上ると伝えている。また報道は、USOCや米国体操連盟が(性的虐待の報告を受けながらも)法執行機関に届けておらず、性的虐待を行ったコーチを野放しにしていたことも明らかにしている。さらに悪いことに、彼らはむしろ、虐待を受けたアスリートに疑いの眼差しを向けていた可能性もある。

モラルに向かわせるメカニズム

人々が性的虐待について沈黙を守ることになってしまったのには、いくつかの理由がある。第一に、自己防衛のためだ。金銭的、社会的、そして政治的なリスクとメリットのバランスを考えた結果の判断というわけだ。この問題を解決し、人々をモラルに向かわせるためのメカニズムが必要である。

沈黙のもうひとつの理由は、これが性に関するものだということだ。性的ないたずらは、恥、罪、自己嫌悪、恥辱、そして否認にかかわる行為である。もしナサールが単に若い女性たちを殴っていただけだとしたら、どれほど早く問題が報告され、対処がなされていただろうか。性犯罪に関して言えば、アメリカは依然として清教徒的なのだ。そして被害者を責めるという起こりがちな反応は、なんの役にも立たない。

新たな法案は、役員や理事、職員たちに対し、性被害の訴えを知ったときにその問題に取り組むこと、隠さないことを義務付けることになる。この従うべき法案は、もっと早くつくられるべきだった。そして今後は、より多くの女性が州医事当局(state medical licensing boards)に加わるべきであり、性的虐待の罪を犯したいかなる医療関係者も被害者に会わせないようにしなければいけない。

法律によって、スポーツ界から虐待を根絶することはできない。しかし、これは重要な前進である。親やコーチ、トレーナーやチームドクターを信頼する若者たちは被害に遭いやすい。彼らが意味のある法的保護を受けるのは当然のことである。

翻訳・編集=宮本裕人

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