ビジネス

2018.02.09

グーグル、フェイスブックの牙城を突き崩す「権力分散化」の可能性

(Photo illustration by Jeff J Mitchell/Getty Images)


その他にもWAX(Worldwide Asset eXchange)はオンラインゲームのアイテムをユーザー同士がピア・トゥ・ピアで交換できるマーケットプレイスで、これはdecentralized版メルカリとも言えると思います。

両者の違いは、WAXではブロックチェーン上の自律的でトラストレスなネットワークなので、メルカリのような運営者が介在しないこと。つまり、現在メルカリで徴収されている10%の手数料が発生しないのです。

同じ理屈でdecentralized版フェイスブックが実現すれば、運営の収益化のために表示されている邪魔な広告がなくなります。decentralized版フェイスブックと既存のフェイスブックが同時に存在すれば、ユーザーが前者を選ぶのは明らかですよね。

これから新セブンシスターズを倒す可能性があるのは、このようにブロックチェーンから生まれたサービスではないでしょうか。また、仮にdecentralized版サービスが巨大化して利己的な動きをとれば、ハードフォークが起き、さらに新たなサービスにコミュニティが移っていきます。つまり、新セブンシスターズで心配される暴走のリスクをコントロールできるのです。

ネットが個人の自由を謳っていても、サービスを運営する企業が存在する以上、価値の指標は企業の利益にならざるを得ません。しかし、decentralized版サービスではいままで中央に徴集されていた利益がユーザーに行き渡ります。早期にネットワークに参加するほど多くのトークンが手に入り、ネットワークの規模が拡大するほどトークンの価値も上がります。この段階ではもはや利益という概念は存在せず、ネットワークの大きさが価値の指標になるでしょう。

バブルが弾けたあとこそ重要

decentralizationの流れは、企業だけでなく国家にも及ぶでしょう。例えば、仮想通貨がこのまま発展すれば、中央銀行が担っていた貨幣のコントロールがコミュニティに委ねられます。また、契約をプログラム上に書き込み、自動的に実行してくれるスマートコントラクトは法律によって契約が保証されない多くの国にとって革命的な存在になるはずです。

これは我々にとっても他人事ではありません。国家権力や新セブンシスターズなどが間違った方向に動いた時に、個人の権利や自由を守るための保険が必要となります。その大きな鍵になるのがdecentralizationなのです。

とはいえ、それが形になるにはまだまだ時間がかかります。現状の仮想通貨バブルは早晩弾けるはずです。ただ、アメリカのITバブルの時に、バブルの焼け野原からアマゾンやグーグルが出てきて世の中を変えていったように、今回の仮想通貨バブルも崩壊した焼け野原から、本当に世の中を変えていくdecentralizedなサービスが生まれてきて、新セブンシスターズの牙城を突き崩し、インターネットの世界を一新してくれると僕は信じています。

文=國光宏尚

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