世界で現在使われているロケットのうち、ファルコンヘビーの能力はその他各社のロケットに2倍以上の差をつける“最強の”ロケットだ。打ち上げ時の推力はボーイング747の18機分相当する約2267t。27基の「マーリン」エンジンを搭載しており、その推力もまた、これまで最大の能力を持つロケットだった米ユナイテッド・ローンチ・アライアンスの「デルタIVヘビー」の2倍を超える。
この莫大な大きさの推力は、運搬能力(ペイロード)の高さを意味する。ファルコンヘビーは地球低軌道に約63.8tを運搬することが可能だ。さらに、スペースXによれば、デルタIVヘビーの2倍以上の重量を3分の1のコストで運搬することができる。
また、別の見方をするとファルコンヘビーは、「満員の乗客と乗員、上限までの貨物を載せ、燃料を満タンにしたボーイング737」を搭載できるということになる。これ以上のペイロードを持つロケットは、アポロ計画に使用され、1973年に運用が停止された「サターンV」だけだ。
ファルコンヘビーの今回の打ち上げの目的は、積載物を地球の公転軌道と火星の公転軌道に接する楕円軌道(ホーマン軌道)上に投入可能であるかを確認すること。実験は失敗に終わる可能性も高かったことから、今回ロケットに搭載した貨物は、スペースXのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が所有する価格およそ10万ドル(約1090万円)の愛車、テスラ「ロードスター」のみ。運転席には宇宙服を着たダミー人形が乗せられている。
マスクによると、車内ではデヴィッド・ボウイの「スペイス・オディティ」がループ再生されている。実験の前日にマスクは報道陣に対し、「ロードスターは地球から4億km離れたところまで行き、秒速11kmで走ることになる。数億年、あるいは10億年以上、軌道上にとどまると考えている」と話した。
以下、ファルコンヘビーとその他各社のロケットのペイロードを比較した。
各国のロケット(低軌道打ち上げ能力)のペイロード
・ファルコンヘビー(米国)/63.8t
・スペースシャトル(米国)/24.3t
・プロトンM(ロシア)/23t
・デルタ IV ヘビー(米国)/22.5t
・タイタンIV-B(米国)/21.6t
・アリアン5 ES(欧州宇宙機関)/19.9t
・アトラスV 551(米国)/18.5t
・H2B(日本)/16.5t
・LM3B(中国)/11.1t
出典:Space X