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エール大学教授 ロバート・シラー(Photo by Wendy Carlson/Getty Images)

シラーは「大半の人はナラティブで考えるが、経済学者はナラティブにひどく弱い」と断言。その後、米CNBCテレビのインタビューに応じたシラーは「私は昨年、報道機関が理解しているある事実を経済学者が無視していたことについて厳しく非難した。それは、ナラティブが人間の行動の原動力となることだ」と話した。

昨年、米経済学会(AEA)第129回年次総会で演説したシラーは、疫学と経済学の意外な共通点について語った。「人間の脳はこれまで常に、消費や投資などの基本的な行動を含む現在の行動を正当化するため、ナラティブに注意を向けてきた。

それが事実であろうとなかろうとだ。ナラティブは『バイラル(爆発的に共有されること)』になり、時に世界規模で広まりさえして、経済的影響をもたらす」

シラーによると、病気やウイルスの感染経路のモデルは、アイデアが口コミで広がっていく現象にも応用できる。ストーリーはアイデアを感染症のように広げていく。もちろん「感染」する価値がある素晴らしいアイデアもあるが、一度バイラルになると世界経済に破壊的な影響をもたらすものもある。

世界恐慌を加速させたナラティブ

シラーは、1930年代の世界恐慌を悪化させた原因が、バイラル化したナラティブだったと指摘する。1929年10月、株式市場暴落後の最初の日曜日、教会で説教をした聖職者たちは市場暴落の原因が1920年代の「モラルと精神の不節制」にあるとし、このことが月曜紙面で特集された。「世界恐慌のマクロ的筋書きが次第に、『狂騒の20年代』の不節制と病的な自信に対する国民的嫌悪感へと変化した」とシラーは指摘する。

ナラティブ(物語)の研究は、人間を理解することでもある。人はストーリーで考え、世界をストーリーの視点で見て、ストーリーテリングを利用してアイデアを伝える。

ストーリーが人間の行動の中心にあると考える著名経済学者がいる。彼によると、ナラティブの力を理解すれば経済の浮き沈みを予測し、危機の悪化を食い止めることができる。

その経済学者とは、ノーベル経済学賞受賞者でエール大学教授のロバート・シラー。株式や住宅市場のバブルの危険性について、危機が起こる前から警鐘を鳴らしていた人物でもある。彼は先日、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で、私が関心を向けるある話題について強いメッセージを打ち出した。それは人を動かすナラティブの力だ。

人々の支出が劇的に減ったため企業は倒産し、パンの配給を待つ列ができるようになった。個人のストーリーの一つ一つが、恐怖を増幅させていった。

編集=遠藤宗生

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