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2018.02.10 18:00

グーグルキラーの最終兵器は、アフリカの「驚異的な人材プール」

リセゲンが設立したガーナのアクラにあるメルトウォーター起業スクール(MEST)の建物の間にある橋にて。「才能はあらゆるところにある。しかし、機会はそうではない」。

リセゲンが設立したガーナのアクラにあるメルトウォーター起業スクール(MEST)の建物の間にある橋にて。「才能はあらゆるところにある。しかし、機会はそうではない」。

10年前、ヨーン・リセゲンのメディア情報分析会社「メルトウォーター」は窮地に立たされていた。グーグルとヤフーが鳴り物入りで彼の縄張りに足を踏み入れてきたのだ。

契約した顧客にメディアに掲載された情報をモニタリングするメルトウォーターの有料ビジネスは、突如として先行きが厳しくなった。グーグルアラートが同様のサービスを無料で提供し始めたからだ。

しかし、ビジネスを縮小するかと思いきや、リセゲンは積極的な採用活動に乗り出した──5年間で十数カ国にまたがる3000人の応募者を、自ら面接したのだ。

型破りな解決策を見つけるため、リセゲンが選んだキャラクターはユニークだ。

例えば、スウェーデン経由でアメリカに渡ってきたイラン人の難民をエグゼクティブ・ディレクターに据えた。また、神学校修了間近のハンドボール選手、セバスチャン・ゲイズを採用した。聖職者になるよりもメルトウォーターで働くことを選んだ理由をリセゲンが聞くと、「メルトウォーターの商品の方が売りやすい」と答えたからだという。

「あらゆるところに、『才能』はある」このリセゲンの哲学に支えられ、メルトウォーターはグーグルとヤフーに挑まれた闘いを生き抜いただけではなく、3億ドル(約340億円)の年商と推定利益率15%を稼ぎ出す企業へと成長した。

サンフランシスコに本社を置く同社は、ハーバード・ビジネス・スクールやNFLのデンバー・ブロンコスに至るまで2万5000の顧客を抱えており、彼らはいわばグーグルアラートの高性能版というべき同社のサービスに代金を支払っている。メルトウォーターは、顧客にメディア露出を知らせるだけではなく、さまざまなツールを提供している。例えば、肯定的な露出と否定的な露出を見分けられるサービスだ。料金は年間5000〜2万5000ドルになる。

韓国に生まれて、ノルウェーに養子へ

「あらゆるところに『才能』はある」リセゲンのこの哲学は、自らの生い立ちが証明している。

1968年に韓国で生まれたリセゲンは、ノルウェー人の家族に養子に迎えられ、スウェーデンとの国境近くの小さな農村で育った。「初めて会う人には、少々驚かれます。背が高くないし、金髪でも、ハンサムでもないからです」とリセゲンは言う。

「私は、いわゆるレッドネック(編集部注・学のない白人労働者を軽蔑する表現)の子どもでした。世界に何があるのか、あまりよく知りませんでした。いまだにガソリンスタンドで給油係の仕事をしている友人もいます」

リセゲンは友人とは別の道を辿った。88年にベルゲン工科ユニバーシティ・カレッジに入学。およそ1万ドルという学生ローンのほぼ全額をつぎ込んで、当時最速のパソコンを購入し、ソフトウェアを設計し始めた。卒業後は、ノルウェー・コンピューティング・センターに勤め、Javaに夢中になった。

その後、同センターを辞めてインターネット・コンサルティング会社「EUネット・メディア」を創業。ノルウェーはリセゲンの協力のもと、95年12月に同国初のオンライン取引を実現した。その2年後、リセゲンはコンサルティング会社を700万ドルで売却。続いて同様の会社を立ち上げ、99年に今度は4000万ドルで売却した。その後、さらにもう1社を設立し、スウェーデンで上場した同社は、時価総額5億ドルの企業に急成長した。しかし結局はドットコムバブルの崩壊でその株価が急落するさまを目の当たりにした。
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文=ザック・オマリー・グリーンバーグ 翻訳=木村理恵 写真=ナナ・コフィ・アクア

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