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2018.02.08 08:30

日本IBMが20年かけてたどりついた「本気の女性活躍支援」の姿

「育児休職をとらずに復職したい」「保育園をつくってくれるなら会社の近くに引っ越してくる」という女性社員の声に応え、2011年、本社に「こがも保育園」が開設。現在約30人の社員が利用。

1960年代から4年制大学卒業の女性を積極的に採用し、「女性が活躍できる会社」として長年認知されてきた日本IBMだが、本格的な女性活躍の分岐点はやはり98年のJapan Women’s Council(JWC)設立だろう。

背景にあるのは、前年に米国本社が発表した国別IBMの女性管理職割合ランキング。日本はたったの1.8%で、世界最下位だった。女性社員による女性活躍支援施策の見直しと検討をスタートしたJWCは、最初の社内ヒアリングで女性が管理職になれないのは「すぐ泣く、すぐ辞める、チャレンジから逃げる」といわれたのを受け、「泣かない、辞めない、覚悟をもつ」女性を増やすことを第一の目標とした。

その後も、自らのキャリア課題を分析し、解決策を経営陣に提言。1カ月の総労働時間を80%または60%に調整できる「フレックス短時間勤務」、家族ひとりにつき5日間の有給休暇を付与する「子の看護休暇/介護休暇」など、働く選択肢を広げる魅力的な施策が導入された。

「でも、女性活躍支援は女性のための仕組みではないんです」と人事・ダイバーシティ企画部長の梅田恵はいう。

「女性もダイバーシティのカテゴリーのひとつ。かつダイバーシティは人事戦略ではなく、経営戦略。人材の多様性こそが、会社とお客様とに多様な発想をもたらす基盤です」。事実、男性社員や介護が必要な社員からも「効率的に働けるようになった」と好意的な声が多数上がっている。

2011年には営業女性にフォーカス。「営業は基本、夜討ち朝駆けで体力が要るし、まだまだ男性中心の世界なので孤立したり、子どもを持つことが想像できないと、他部署よりも異動や退社が目立っていた。しかし、管理職の女性のほとんどは、実は営業出身。いちばんハードな30代にお客様とリレーションを築き、売り上げを上げれば、役員も目指せるのだと若い女性社員に伝えたかった」。

JWCは営業の執行役員をリーダーに据え、平均年齢32歳の18人の営業女性を集めて施策を練る。その蓄積が、他業種7社との合同プロジェクト「新世代エイジョカレッジ」へと実を結んだ。


日本IBMの歩み、女性活躍を支援する各種コミュニティの説明、ダイバーシティについての講演録などが掲載された、これまでの取り組みが総合的にわかるパンフレット「IBM Diversity」

日本IBM初の女性取締役に就任した女性は、07年の基調講演で「キャリアの馬に乗ったら降りないこと」と提言した。それから10年。17年に制作されたダイバーシティに関するパンフレット巻頭には、JWC発足当時ひとりだった女性エグゼクティブが38人まで増えて、ずらりと並んだ。「壮観ですね」というと、「“怪獣図鑑”とからかう人もいたけど」と梅田が笑う。その表情は実に満足げだった。


日本IBM◎米IBM日本法人。1937年、社是である「THINK」の文字を掲げた小さな事務所からスタートし、現在はコグニティブ・ソリューションとクラウド・プラットフォームに注力。女性社員も営業職やITエンジニア、研究職など専門的な職種で活躍できる。現在、6人の女性執行役員と32人の女性理事が、次世代リーダーを育成中。

文=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

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