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2018.02.20

ダボス会議流「経営リスク」の再評価

Drop of Light / shutterstock.com


グローバルリスク報告書2018では、テールリスクを踏まえた、「Risk Reassessment」を行うに際して、必要な3つのカテゴリーと3つの要素、あわせて9つの視点(レンズ)が提示されている。

1. Structural resilience(構造的レジリエンス
リスクの再評価に際して、組織自体の体系やダイナミズムを考慮する


・要素:冗長性、モジュール性、多様性
・機能:自力で外乱から、より早く戻ってくること
・概説:組織資源が疎結合している場合にのみレジリエンスを向上させる。各要素があまりにも離れすぎている場合や、あまりにも強固に結合している場合は、柔軟な適応能力を失う。自然界と同様に、多様性は致命傷を回避する重要なレジリエンス戦略となる。いわゆる、分散またはポリセントリックなリスクガバナンス。

2. Integrative resilience(統合的レジリエンス
リスクの再評価に際して、外部の静的動的コンテキストと、自組織との複雑な相互接続を確認する


・要素:マルチスケールの相互作用、閾値(ティッピングポイント)の理解、社会関係性資本の充実
・機能:自組織が機能不全に陥った時、他組織や社会の助けを得る
・概説:個人、家族、地域、都市、州、国などのシステムにおいておそらく最も明白な概念。接続の健全性は、システムのレジリエンスに大きく貢献する。閾値については自己無謬性があり、厳しい自己評価が必要。究極の危機の時、主体と各種社会資本との社会的な結束が、レジリエンスの源泉となる。いわゆる、共助のリスクガバナンス。

3. Transformative resilience(トランスフォーマティヴ・レジリエンス
リスクの再評価に際して、一部のリスクを緩和するには組織自身のトランスフォームが必要であるという事実に気がつく


・要素:先見性、実験、イノベーション
・機能:原状回復の選択肢を未来志向でやめ、自己を再定義し、新たな取り組みを始める
・概説:危機後、出発点に戻る以外の選択肢を考える。場合によっては、組織は未来志向で組織機構や事業そのものを変更する必要がある。あるいは、外部環境によって強制的に変更されることになる。未来志向とイノベーションのリスクガバナンス。

これら「Risk Reassessment」で提示された9つのレンズで充分かと言えば、不足している視点も多々あるだろう。とはいえ、この9つの視点から、皆さんが所属する組織のリスク評価を行ってみてはいかがだろうか。

競合他社よりも早く自らの弱さに気がつき、ステークホルダーや社会との関係性の質を再考できれば、長期的な信頼性や優位性が得られると、私は思う。その際、「3. Transformative resilience(トランスフォーマティヴ・レジリエンス)」で解説したように、“何かをやめる”という選択も、当然、必要になってくる。

過去の成功体験の延長で経営を考えている日本企業の多くが機能不全に陥っている。組織資源の強み弱み、経営計画の実効性を、グローバルリスクを活用して再評価してみてはいかがだろうか。

文=蛭間芳樹

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