共働きが当たり前になり入所基準も緩められる一方、保育所の入所希望者が増えるにしたがって、待機児童問題が深刻化した。
実をいうと、待機児童ゼロの目標が最初に定められたのは、01年。第二次ベビーブーム世代(1971年から74年の生まれ)が安心して子供をつくり育てられるように、という思惑もあったようだ。しかし、目標は達成されず、08年に改定。「新」待機児童 ゼロ作戦は、10年後(つまり、17年度末)に待機児童をゼロにするというものだった。これが、先に述べたように、さらに3年先送りされたわけである。
最初の問題提起から16年間たっても、目標は未達成。第二次ベビーブームの女性たちの出生率は下落を続け、第三次ベビーブームは来ないまま、「手遅れ」になってしまった。
どうして、こんな政策の大失敗が起きたか。それは、保育所が児童福祉法に根拠を求めているからだ。つまり、乳幼児をもつ父母全員の権利として規定していないどころか、「保育を必要とする」状況でないと預かってもらえない、という法律そのものが問題なのだ。ここを誰も問題視してこなかったからこそ、「保育園落ちた、日本死ね」というブログへの書き込みが、大きな共感を呼んだのだ。
安倍総理が、人づくり「革命」をおこすなら、この保育所の根拠を児童福祉法に置くことをやめるべきだ。そして、幼稚園と同様、学校教育法に置く、つまり所管を厚生労働省から、文部科学省に移して、両親が職業をもつかどうかを問われずに、預けることを権利として認めることだ。
0歳から4歳までの人口は、おおよそ500万人。この人たちのために、2兆円を使い、待機児童ゼロにするほうが、「幼児教育無償化」よりも緊急性が高いのではないか。2兆円を500万人で割ると、一人当たり、40万円である。一人ひとりに40万円相当の「保育料クーポン」を配布して、保育所の設立を後押しすることが可能となる。
第三の疑問は、公立幼稚園と私立幼稚園への補助にどのような区別をするのか、ということである。もちろん、この国公立と私立への補助の問題は、幼稚園に限った話ではなく、中学・高校、大学のそれぞれのレベルで直面することである。これについては、また別の機会に議論をしたい。
いっそのこと、「義務教育」開始年齢を引き下げて、今の幼稚園を「義務教育」にすると、自動的に「無償化」は実現できる。少なくとも、公立はすべて無料になる。
数十年前に比べれば、現在の子供たちの発育も早く、多くの知的刺激にさらされている。義務教育開始年齢の引下げは至極もっともなことではないか。アメリカでも、5歳入学の小学校は多く存在している。小学校への5歳入学はよいが、4歳が早すぎるということであれば、そこは段階を踏めばよい。人づくり「革命」と銘打つからには、 義務教育開始年齢引下げくらい、インパクトのあることをしてもらいたい。