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2018.02.04 11:30

命を守り、企業を救う AI気象予報の最前線

Photo by iStock

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みなさんは天気予報をどんな時にチェックしているのだろうか? 週末の旅行計画のため、翌日の服装を考えるため、多くの場合はごく個人的な事情かもしれない。しかし企業や政府にとって、気象予報の適中率(予報精度)の向上は国家事業や経済活動にかかわるだけに、大きな関心事だ。

例えば、気象予報がより正確になれば、農家は栽培と収穫の計画を立てやすくなるし、航空会社は飛行機を最大限に使用することが可能となる。また、2017年にアメリカで発生した大型ハリケーンのような数百万人規模の被害者を出す自然災害に対しても、政府や企業はより早急に対策をとることができるようになるはずだ。

そこで今、予報の精度を上げるためにもっとも期待されているのが、膨大な情報を瞬時に解析できるAIなのだ。

現在、宇宙空間には雲のパターン、風、気温などの豊富なデータを提供する気象予測用の天文衛星が1000以上あると言われている。さらに、地球上には数十万の政府機関や私的な気象観測所が存在し、常にリアルタイムのデータを収集している。今後は車やソーラーパネル、携帯電話、信号機、空調システムなどもまた、予報を改善するための情報源として利用されつつある。

こうした情報をAIによってできるだけ多く、早く解析できるようになることで、気象予報の精度も格段に上がるだろうというわけだ。では、具体的にどんな動きがあるのだろうか。

現在、気象予報に対するAIの導入について、最も多大な投資をしていると言われているのがIBMだろう。同社は2016年、weather.com、Weather Underground、The Weather Company(以下、TWC)、WSIといった気象関係の企業を次々と買収した。

そして、この合併の成果のひとつとして同年6月に発表されたのが、TWCのグローバルな予測モデルとIBMが開発したハイパーローカル気象予測(約300~2300平方メートルの局地的な範囲)を組み合わせた新しい気象予測モデル「Deep Thunder」だ。

Deep Thunderは従来の気象衛星やレーダーの情報に加え、同社のコグニティブ・システム「IBM Watson」に気象データを学習させることで、機械学習によって天気を当てようという新しいアプローチで、ビジネスクライアントそれぞれのニーズに合わせてカスタマイズされた1時間ごとの予報データを提供していく予定だという。輸送会社、公益事業会社、さらには小売業者への導入が期待されている。

日本IBMもまた、2017年3月に気象庁の定める気象予測業務の許可を取得し、本社内に気象予報センター(アジア・太平洋気象予報センター)を設立し、気象予報を開始すると発表した。同センターには自社の気象予報士が配置され、24時間365日、リアルタイムにアジア・太平洋地域の気象予報を行うという。本国に限らず、世界的な規模で気象予報の改善に取り組んでいく予定だ。

農業分野においては、多国籍バイオ化学メーカー・モンサントが専門的な気象予測システムの開発に力を入れている。同社は2013年、農業従事者たちに向けた地元の予報情報を提供していたClimate Corporationをわずか10億ドルで買収。続けて、予測と分析を強化するため、農業ソフトウェア会社HydroBioを買収し、AIの機能学習を活用した農業専用の気象予報の精度の改善に努めてきた。

衛星画像、土壌データ、地元の気象データを組み合わせて使用することで、農業従事者がいつ灌漑すべきかを検討し、余分な水資源を浪費することを防ぐ上、収穫量を上げることに貢献できるという。
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文=呉承鎬

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