ハイパーループを米中西部に、4時間の移動を31分に爆速化

Photo by David Becker/Getty Images

次世代交通システム「ハイパーループ」を米国の中西部に拡大する動きが始まった。ミズーリ州でのハイパーループ建設を目指す「ミズーリ・ハイパーループ連合(Missouri Hyperloop Coalition)」は1月30日、州内のカンザスシティからコロンビア経由でセントルイスを結ぶ路線の採算性調査を開始すると発表した。

ハイパーループは、州間高速道路70号線(I-70)に沿って開発され、建設と運営は「Virgin Hyperloop One」が担う。採算性の調査はカンザスシティに本拠を置くエンジニアリング会社「Black and Veatch」と「Virgin Hyperloop One」が実施。さらにミズーリ大学も参加し、“産官学”の取り組みになる。

車ならセントルイスからカンザスシティ間の移動に4時間を要するが、このプロジェクトが実現すれば31分に短縮される予定だ。

Virgin Hyperloop Oneは昨秋、米国内に建設するハイパーループの最終候補10ルートを発表したが、セントルイスとカンザスシティ間を結ぶルートは含まれていなかった。

Virgin Hyperloop OneのDan Katzによると、最終候補地の発表以来、同社の方針に変更があったという。「背景には産学官連合が生まれたことがある。ファイナリストを選定したときには、まだ連合は発足していなかった。これらのパートナーを得たことで、今後のプロジェクトの進め方に変更が生じた」

Black and Veatchのヴァイスプレジデント、David Leligdonによると、採算性調査には7-9ヶ月を要するという。作業には入手可能な電子データを用いるほか、ドローンや人力の調査も行い、エンジニアリング面や経済面の検証に重点を置くという。

ミズーリ州運輸省も調査に参加し、同省が保有するI-70の乗用車やトラックの交通量に関するデータをBlack and Veatchに提供する。

Katzによると、Virgin Hyperloop Oneにとっても貨物と旅客の交通量データは貴重だという。「我々は、旅客用ポッドと貨物用ポッドの両方を運行することを想定している」

地元のテック業界もプロジェクトを歓迎

ミズーリ州運輸省によると、ミズーリ州内を走るI-70の貨物輸送量は年間3150万トンを超え、金額に換算すると590億ドル(約6.5兆円)以上に相当するという。また、I-70の交通量は当初の計画の2-5倍に達しており、同省は、ハイパーループには旅客、貨物ともに大きなビジネスチャンスがあるとしている。

今回発表されたルートを歓迎している団体の一つが、「カンザスシティ・テック評議会(Kansas City Tech Council)」だ。この組織は、カンザスシティにおけるテック業界のエコシステム構築を推進している。

代表を務めるRyan Weberによると、カンザスシティ・テック評議会は、Virgin Hyperloop Oneに対してルート提案を行った当初からプロジェクトに参画している。彼は、ハイパーループの建設が地元のテック業界に大きく貢献すると考えている。

「カンザスシティにテック企業を誘致するためには、ハイパーループのような資産が不可欠だ」とWeberは話した。

編集=上田裕資

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