IBMのCMOが切り開く「アジャイルマーケティング」の未来

Laborant / Shutterstock.com

ミシェル・ペルソの事務所は、ニューヨーク市グリニッジビレッジ地区の小さなビルにある。つつましやかな外見にもかかわらず、この建物はIT世界大手IBMのマーケティング活動の拠点であり、ここでペルソは同社の最高マーケティング責任者(CMO)を務めている。

ペルソは以前、オンライン旅行予約サイトのトラベロシティ(Travelocity)や、ファッションサイトのギルト(GILT)のCEOを務めていた。また、銀行大手シティグループではCMOとして、同行が世界中に抱える1億人の顧客に提供するデジタル体験や、グローバル顧客マーケティング戦略・実行の責任者を務めた。ニューヨークでの自転車シェアサービス「シティバイク(CitiBike)」展開を率いたのも進めたのもペルソだ。

IBMは早い段階からアジャイル開発手法(素早さを重視するソフトウエア開発手法)を導入した企業だが、ペルソはこれをマーケティングにも応用している。

「アジャイルマーケティング」をこれほど大きな規模で導入する企業の例は、なかなかないだろう。ペルソはトラベロシティやギルトでのCEO時代にアジャイルマーケティングを他に先駆けて進めた人物であり、IBMが現在この分野の先導役となっているのも驚くべきことではないかもしれない。

アジャイルマーケティングの柱となるのは、即興性、イテレーション(反復)、意見よりも試験やデータを重視する姿勢、個人主義、そして部署や職位を超えた協力だ。結果として、スピードや適応性、創造性が実現できる。


IBMのミシェル・ペルソCMO(Photo by Rommel Demano/Getty Images)

ペルソは先月、筆者にこう説明した。「私たちのアプローチで大切なのは、徹底的な透明性を確保すること。各チームは担当製品、事務所、国・地域にかかわらず、他の全チームと比べて互いがどれほどの業績をあげられているかを知ることができる。また、この情報は会社全体に公開されている」

スムーズな情報共有の利点は非常に大きい。「例えば、韓国のチームが次に取るべきアクションは何かが分かることで、適切な資金援助の変更ができる」
次ページ > 顧客へのアプローチは「感性」から「科学」へ

編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事