この訴訟は第一審ではティンダーからの異議申し立てが認められたが、カリフォルニア州の控訴審は1月29日、その決定を覆した。
ティンダーは表示された相手の顔が気に入れば右にスワイプしてライク(いいね)し、気に入らなければ左にスワイプするデートアプリ。基本は無料で利用可能だが、ライクのやり直しなどが可能になる有料版の「ティンダープラス」は30歳以上の月額料が19ドル99セントなのに対し、30歳未満は9ドル99セントになっている。
2015年に有料版が導入された際にも批判の声が上がり、ティンダーの広報担当はABCニュースの取材に対し、「自由になる資金が少ない若い世代には低めの金額を提示しないと加入してもらえない」と説明していた。
ティンダーを利用しているライターのDani Burlisonは、30歳以上のユーザーから30歳未満の約2倍の料金を取ることは「相性や完全なプロフィールを提供せず、好きか嫌いかでスワイプするだけの機能に頼っているアプリとしてはユーザーに多くを求めすぎだ」と2015年にWIREDの記事で指摘していた。
「私のような“高齢者”は比較的高い収入があり、血迷ったスワイプを取り消すためなら財布を開くとティンダーは思っているようだ」
一方、非常勤教授でSNSコンサルタントのJeff Gibbardは当時、ティンダーは年齢で差別しているわけではないとWIREDで論じている。「ティンダーは自由市場で活動する他の企業と同様に収益を上げるための価格戦略を行っているだけだ」とGibbardは述べた。ただし、彼も同社の方針には賛成していない。
この訴訟では第一審がティンダーからの異議申し立てを受けて、同社が年齢によって価格を変えていることは「市場原理に沿ったもの」であり、恣意的あるいは不公平な差別につながるものではないとしていた。
控訴審は今回その判断を覆した理由として、年齢によって一般的に支払える金額が調査結果として出ているとしても、30歳以上のユーザーの中にも5~10ドルを追加で支払うことを負担に感じる人がいることを挙げた。以下が控訴審の裁判官の書面による説明だ。
「ティンダーの市場調査が示す年齢に応じた支払い可能額がいかなるものであろうと、それに当てはまらない人々もいる。年齢が上の消費者の中にも、予算を抑えたいと考える人もいる。今回、問題となった価格体系は、年齢の高いユーザーの所得を恣意的に一般化し、若いユーザーよりも高い料金を取っているという点で、Unruh Civil Rights Act(年齢や性別、人種などによる差別を禁止するカリフォルニアの州法)と不正競争法に違反している」
「本件に対する異議申し立ては、差別的であるとされた料金体系を正当化する根拠を欠いており、第一審が異議申し立てを認めたことは誤っていたと判断する。よって控訴審はこの申し立てを左にスワイプし、判断を覆すこととする」
筆者はこの件でティンダー側にコメントを求めている。先方から回答が得られ次第、この記事をアップデートする。