米ニュースサイト「スレート(Slate)」は昨年11月、インスタントポットは今や経済全体にも影響を及ぼす、宗教のようにまでなっていると伝えた。また、フェイスブックにはユーザーのグループがあり、メンバーは今年1月24日までの時点で120万人を超えている。
開発のきっかけは解雇
これだけの成功を収めることができたのは、キッチン用品としては悪くない結果だ。インスタントポットを開発したのは、カナダ人の元エンジニア、ロバート・ワン。2010年に自ら立ち上げたモバイルメッセージングのスタートアップから解雇された後、次世代のスロークッカーとして、加圧調理器でもあるインスタントポットを発売した。
インスタントポットは炊飯器や蒸し器、保温器としても使えるほか、ソテーをしたり、ヨーグルトやチーズケーキを作ったりすることもできる。自家製のペットフードを作るために利用している人もいる。
並外れた人気で世間を沸かせるまでになった理由を明らかにするため、ワンから直接、話を聞いた。
──インスタントポットがこれほどの成功を収めると予想していたか。
いや、実はこうなると思っていた。インスタントポットは日常生活の中で多くの人が抱えている重大な問題を解決するものだ。ある製品が問題をうまく解決してくれたら、人はそのことを話題にするだろう。話題になれば、購入する人が増える。インスタントポットが解決するのは、夕食、それも健康的な夕食を短時間で調理するという問題だ。
ファストフードや加工食品はあり過ぎるほどある。だが、家族のために健康的な食事を1時間以内で用意したいと思っても、それほど多くの選択肢はない。(だが、インスタントポットのおかげで)それが可能になったのだ。
──インスタントポットは、発売後すぐに人気に火が付いたというわけではなかったと聞く。
まったくだ。2010年10月に発売した。その年の後半にはアマゾンに出品したが、それほど売れ行きは良くなかった。それに、発売当初の製品は、完璧とは言えなかった。その後、1~1年半ごとに製品に改良を加えていくうちに、多くのレビューが寄せられるようになった。
感激したのは、「魔法のポット」と呼んでくれる人たちがいたことだ。人生を変えてくれたと言ってくれた。外で仕事をしている人たちも、温かく、おいしい夕食をテーブルに乗せることができる。