フォードが直面する「交通の未来はカネになるか」問題

(Photo by Tim Boyle/Getty Images)

フォードは、スマートシティ時代におけるモビリティ構想を長年語ってきたが、コア事業に育てる具体的なプランを描けていなかった。しかし、それが今変わろうとしている。

1月24日に市場予想を下回る決算を発表したフォードは翌25日、都市部で人やモノを効率的に輸送する主力企業になるための具体的な取組みを示した。同社は2016年に子会社の「フォード・スマート・モビリティ(以下、フォード・モビリティ)」を設立。同社社長のMarcy Klevornのもと、交通システムやコネクティビティ、ライドシェア、フリート管理などの分野に注力してきた。

今回のモビリティ事業の再構築でフォードは、スタートアップ2社を買収し、自動車以外の部門の収益向上を目指す。その1社は、シリコンバレーに本拠を置く「Autonomic」だ。同社は自動車やトラック、歩行者、交通インフラに関するデータを共有するクラウドサービスを提供している。

もう1社は、都市部のマイクロトランジット(小規模旅客輸送)プログラムを管理する「TransLoc」だ。モビリティ部門のCFOであるNeil Schlossは、両社の買収金額について明らかにしていない。

さらに、フォードは「Ford X」というインキュベーターも設立。モビリティやテック分野のスタートアップとの協業を図る。Ford Xの責任者には、AutonomicのCEO兼共同創業者であるSunny Madraが就任する。

既存のフォード・モビリティは今後、モビリティ事業を推進し、プラットフォーム開発を進めると同時にサービスのマーケティングも行っていく。同社のKlevornはカンファレンスコールの中で「都市部のモビリティを改善することは、我々の競争力強化につながるだけでなく、株主に長期的な価値を提供することになる」と述べた。

フォード会長のビル・フォードは、テクノロジーとデータを駆使して都市部のモビリティを改善するべきだと主張してきた。フォード・モビリティの設立から2年が経ち、フォードはより具体的なゴールを設定し、組織体制も整えた。

渋滞の原因である自動車やトラックを製造する大手メーカーが、渋滞緩和のソリューション提供を目指しているのは何とも皮肉な話だが、それだけ緊急度の高い課題だと言える。背景には自動運転車の登場によって車の個人所有が減る事態に備える狙いもある。
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編集=上田裕資

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