ビジネス

2018.02.01

水道管xAIで米国100兆円市場を狙う起業家の挑戦

フラクタ、ラース・ステンステッドCOOと加藤崇CEO


世の中には迂回できないことがある

とてつもない大きな課題に対して、日々行うのは、米国各地の水道業界の展示会を駆け回り、電話でミーティングをし、アポを取りつける地道な営業活動だ。すぐに結果も見えない中、なぜ正しいと信じてやり続けられるのか。

「もともと熱烈に何かをやる、ということは自分の性格にあると思います。ただ、今強く思えるのは、SCHAFTをやっていて本当によかった、ということです」

加藤は13年にグーグルに買収されて大きな話題となった東大発ロボットベンチャーSCHAFT(17年ソフトバンクが買収)のCFOとして、同社による日本初のM&Aに中心的な役割をした経験を持つ。

「究極的な学びは何だったか。それは『全員がノーと言ったっていい』ということです」

十何社ベンチャーキャピタルを回り、全員に「お前はダメだ」と言われた。「人型ロボットは求められていない」「そんな技術はどうでもいい」。しかし、世界はそんな風にものを見ていなかった。アンドロイド創業者のアンディ・ルービンが「お前ら最高にクールだから、ぜひドリームチームをつくろう」と言って買収した。

その時、加藤がブレなかった理由は、人型であろうが、犬型であろうが、足がある限り、彼らの技術を迂回できない。10年、20年かかるかは分からないけれど、この技術の上に人間の生活が築かれることは間違いがない、という原理原則だ。 「世の中には迂回できないことが厳然とあって、それをやることは正しいことなんです」

母親と姉の2人の女性に育てられた加藤は、世の中でフェアではないことを多く見てきたと語る。SCHAFT売却時には、官民ファンドや経産省の批判も平気で行い、周囲を驚かせた。自らを「KY」であると加藤は言う。「だから技術が好きなんです。正しいものは正しいですから」。そんな加藤とチームを、ステンステッドは「クリティカル・シンカー(客観的・本質的思考をする人)と呼ぶ。「重要なのは、質問をして、学んで、自分がどう考えるか。ここには、多様でクレイジーな人が集っている。誰もが何らかの形で貢献することができる」


加藤 崇◎共同創業者兼CEO。早稲田大学理工学部卒業後、東京三菱銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。SCHAFTのCFOを経て、同社を設立。元スタンフォード大学客員研究員。ラース・ステンステッド◎共同創業者兼COO。スタンフォード大学機械工学科卒業後、モバイルOS、スーパーコンピュータなど多くのテクノロジー企業でエグゼクティブとして勤務。

文=岩坪文子 写真=小田駿一

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