ビジネス

2018.02.02

メンズ展示会ピッティで見た、護られた「お祭りビジネス」の可能性

第93回「ピッティ・イマージネ・ウオモ」(c)collective AKAstudio


今回彼が率いた「5 CURATORS/ONE SPACE」では、5名のキュレーターが9ブランドを集め、1つの空間での演出を行った。1200以上のブランドが出展するピッティは、合計6万平米の空間にテーマごとにわかれた14のセクションが存在するが、基本的には複数ブランドの合同ブースはない。

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「5 CURATORS/ONE SPACE」を率いたティー・マイケル氏(前列中央、LIUDMILA MUSATOVA/NEBO_MIO)

「コラボレーションを体現する空間を作りたいと考えました。今回が初の試みですが、今後のピッティでも継続していく予定です」と言うのは、本企画キュレーターの一人、ゲロルド・ブレナー(Gerold Brenner)氏。ファッション業界にて30年以上の経験がある彼は、現在スイス・バーゼルを拠点に、デザイナー、コンサルタント、トレンドフォアキャスターとして活動している。

ブレナーの他にマイケル氏が招集した3名のキュレーターにも注目したい。まずは、ジャマイカ系イギリス人のクリエイティブ・ディレクター、スタイリスト、デザイナーで、ジャマイカ発のUKストリート・カルチャーの展覧会『Return of the Rudeboy』のプロデュースでも知られるハリス・エリオット(Harris Elliott)氏。ほか2名はメディア関係で、ひとりはUKフィナンシャル・タイムズのファッション・ライター兼スタイリストのトマス・スタブス(Thomas Stubbs)氏と「GQ JAPAN」ファッション・ディレクターの森口徳昭氏である。

それぞれが編集したブランドも多様性に富む。例えば、ティー・マイケルとのコラボレーションも行った日本の着物ブランド「Y. & SONS」。創業100年の着物専門店、やまとが手掛けるメンズきものテーラーだ。同ブランドは、初参加であった前回ピッティも、ティー・マイケルとともに出展した。日本以外にも、ロシア人デザイナーのイリヤ・バレギン(Ilya Varegin)氏が手がける「infundibulum」、シエラレオネ、キプロス、英国で育ったフォデイ・ドゥンブヤ(Foday Dumbuya)氏の「LABRUM」など。イタリアから1ブランドだけだったのも印象的だった。

ピッティの狭き門という価値

ピッティ全体の出展者数を国別に見ると、イタリアブランドが674と全体の54%を占めている。2位以降は英国(117ブランド、9%)、3位はフランス(88ブランド、7%)、4位は日本(66ブランド、5%)、5位は米国(60ブランド、5%)と続く。ピッティには計36カ国のブランドが出展しているが、上位5か国の出展ブランド数で、全体の8割を占める。*Pittiウェブサイトの出展者検索画面に基づき算出

一方でバイヤーの内訳は、主催者発の速報データによると、計2万5000人のうち37%(約9200人)がイタリア外からのバイヤー。国別ランクでは、日本からの参加者がトップで、ドイツ、オランダ、スペイン、イギリスと続く。日本のバイヤー数は前回から3%増加し、海外バイヤー全体の1割近い、約850名が参加した。

出展ブランド、バイヤーともに、一国としてのイタリアのプレゼンスは大きいが、ピッティの国際的な影響力は無視できない。他方、ピッティへの出展は容易ではない。

「出展者のほとんどがリピーターであるため、基本的に既存のブランドが出て、枠が空かないと新規ブランドが入ることができません。かつ、数百ものブランドがウェイトリストにいる状態です。しかも、出展審査コミッティーの審査を通過したからといって、自動的に出展できるわけではなく、我々も直前まで最終回答が得られなかったため、直接出向いてプレゼンしてやっと出展が決まりました」

メンズ・アンダーウェアブランド「TOOT」の代表、枡野恵也氏は言う。同ブランドは、前回からの継続出展を果たしている。


TOOTは屋外スペースでファッションショーを行なった(TOOT)

一般的な展示会にも当てはまることだが、基本的にバイヤーはすでに取引のあるブランドを優先するため、新規ブランドは、継続して数回以上出展して、バイヤーに見てもらい、認識してもらうことが必須となる。また、ピッティの場合は、希望のセクションに入れてもらうことも難しい。「TOOT」は、L’Altro Uomoというエントリーブランドが多いセクションに小規模のブースを構えていた。
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文=MAKI NAKATA

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