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I analyze petroleum economics and energy policy.

Photo by Mark Brake/Getty Images

米テスラが先ごろ発表した創業者イーロン・マスクの新たな報酬体系が、いくつかの理由で大きな注目を集めている。関心が向けられている原因の一つは、その体系を完全な「成果連動制」としたことだ。

マスクは一定の目標を達成できない場合、一切の報酬を受け取らないことになる。一方、非常に野心的な目標を実現すれば、数百億ドルを手にする可能性もある。基準とする目標には、売上高と利益のほか、テスラの時価総額も含まれる。

政治経済学を専攻する学生たちは、企業経営者らの中には株主の利益より自らの幸福を重視する者もいることを学び、その事実に驚く。経営陣は本質的に、官僚的な態度を取るようになるものだ。自社の業績よりも自身に与えられた特権と権力を守ろうとする。そのため、この問題への対応策として奨励されているのが、企業の上級幹部に個人資産の多くを占めるだけの自社株を保有させることだ。

当然ながら、多くの企業は報酬制度に工夫を凝らしてきた。何らかの目標を達成した場合に株式やストック・オプションを付与するといったことも、その一例だ。そして、ばかばかしいほど簡単に達成可能な目標を設定する企業もある。

報酬制度に関する企業の戦略には、ほかにも同様に憂慮すべきことがある。報酬を得るために必要な目標の達成ばかりに執着する幹部が出てくる場合もある。さらに、達成可能になるよう目標を操作するだけでなく、明らかな詐欺を働く者が現れる場合もある。7桁の報酬を受け取るために必要な売上高目標の達成を僅差で逃したとすれば、在庫や売上高のデータの操作はまさに“魅力的”なことだ。

一方、問題は役員室だけにあるわけではない。2008年に起きた世界金融危機は融資担当者らに対し、適切な融資の実施よりローンの成約数を増やすことばかり奨励したことが一因だったとされる。また、海外支店など特定の赴任地に短期間だけ駐在し、その間に業績を改善させたかのように見せかけようと、何らかの策を講じたりする幹部の例は、いくらでもある。

そのほか、例えば営業部員を解雇すれば、短期間でコストを削減し、利益を上げることができる。人員削減は長期的には売上高を減らす一因となり得るが、それでも経営者らは、それによってボーナスを受け取ることができる。同様に、研究開発費の削減は長期的には不適切な戦略となり得るものの、短期的にはコスト削減となり、ウォール街に好印象を与えることができる。そして、これもボーナスの獲得につながる。

マスクの報酬体系の意味

マスクの新たな報酬体系についてテスラの株主たちは、誤ったインセンティブにつながるものとして懸念すべきだろうか?

マスクがショーマンであることは間違いない。大言壮語することに病みつきになってはいるが、それは不正行為とは全く違う。実際のところ、マスクにとってはすでに手にしている巨額の富をさらに増すことよりも、輸送手段や宇宙飛行、その他の分野での革命を成し遂げることの方がずっと重要であるように見える。

マスクの新たな報酬体系は、連続起業家にインセンティブを与えるための真剣な努力というよりも、世間の注目を集める手段と見るべきなのかもしれない。そうだとすれば、マスクはもちろん、それに成功したことになる。

編集=木内涼子

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