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2018.02.02 16:00

「あらゆる枠を超えた新結合」大学発・研究開発型ベンチャーの未来

東京大学エッジキャピタルの投資メンバー。多様なバックグラウンドを持つ投資プロフェッショナル8人の強力なチームが、強いコミットメントで、投資先の経営・ファイナンス支援を行う。


PICK UP_01 MUJIN ムジン


MUJINは2011年7月設立。産業用ロボット向けの知能化ソフトウェアを開発する。CEOの滝野一征はイスカルを経て、出杏光魯仙と同社を共同創業。14年、UTEC、ジャフコから総額6億円を調達した。
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世界初完全無人倉庫を支える「ロボットの知能化技術」

中国・上海近郊──。中国ネット通販2位の京東集団(JDドットコム)が2017年10月に発表した“世界初の完全無人倉庫”。荷物の入荷から仕分け、梱包、出荷作業を行うアームロボットの制御装置は、東京大学発ベンチャー・MUJINの製品だ。

物流拠点では荷物の形状や位置、重さ、柔らかさ、障害物の有無などが一つひとつ異なるため、最も困難だとされていたのがピッキング技術だった。なぜ、それが実現できたのか──。そこにMUJINの強みがあるとCEOの滝野一征は話す。
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「我々のコントローラーを使えば、ロボットを『知能化』できる」

産業用ロボットに対し、動作を教え込むティーチングがなくても、自律制御できる動作計画(モーション・プランニング)のAI技術を持つコントローラーを開発。各メーカーが製造する産業用ロボットに高性能カメラと独自のアルゴリズムを持つ同社のコントローラーを組み合わせ、ロボットに考える力を与えた。カメラが3次元で荷物を認識し、ピッキング方法を瞬時に計算し、ロボットに動きを指示、“作業の自動化”を可能にした。

同社の設立は11年。外資系メーカー出身の滝野と、現在CTOを務める、カーネギーメロン大学で博士号を取得し東大研究員だったブルガリア出身の研究者・出杏光魯仙の二人が出会い、立ち上げた。翌12年、UTECが出資。15年には通販大手のアスクルと業務提携も行った。現在、45人いる社員のうち、約6割が外国人と、世界中から人材が集まる少数精鋭のスタートアップだ。

そんなMUJINには現在、世界中から注目が集まっている。17年11月に開催された「国際ロボット展」では「日本はもちろん、中国、イスラエルをはじめ、名だたる企業の経営層が直接ブースを訪れ、商談した」(滝野)という。これからMUJINのさらなる躍進が始まる。

PICK UP_02 ACSL 自律制御システム研究所


自律制御システム研究所は千葉大学・野波健蔵が2013年11月設立した高性能・高品質の自律型産業用ドローン・メーカー。16年UTECらから約7.2億円、18年1月、UTECらから21億円の資金調達を行った。

世界で“新産業創出”を目指す国産自律型ドローン・メーカー


人がコントローラーなどで操作しなくてもいい、自律型の産業用ドローン・メーカーである自律制御システム研究所(ACSL)。「空の産業革命」をもたらすといわれるドローン研究を20年前からはじめた第一人者の千葉大学・野波健蔵教授が2013年に創業した千葉大学発ベンチャーだ。

「電気自動車(EV)であれば米テスラのように、マルチローター(複数のプロペラ)式小型ドローンといえばACSLという会社にならないといけない」

16年、マッキンゼー・アンド・カンパニーからCOOに就任した太田裕朗はそのように話す。

17年10月、楽天とローソンが南相馬市で始めたドローンによる配送の試験運用にASCLが使用されるなど、物流・空撮・測量・点検をはじめ、大手企業40社と共同プロジェクトを行っている。

同社のドローンの特徴は、搭載するカメラで撮影した映像で自らの位置を判断できる技術も搭載し、ルートを事前設定すれば、屋外に限らず、室内でGPS(全地球測位システム)が使えない環境においても完全自律型で動く点だ。また、同社のドローンは最大時速72㎞、50分間連続で飛行し、業界最高レベルの飛行性能も実現している。同社はこの製品により、工場内など室内でGPSが十分に使えない場での点検や、災害現場での状況確認などのニーズに応えている。

太田は、当然のように世界市場を視野に入れている。見据えるのは時価総額数千億円を超える企業だ。そのために、経営体制も強化した。16年、太田をはじめ、前職が大手コンサルティング会社のCMOが参画。17年に、同大手投資ファンドのCFO、同東京大学工学研究科航空宇宙工学専攻助教・米ボーイングのCTOが加わった。18年1月、UTECなどから、約21億円の資金調達も行った。

「僕らは、本気で、『新産業の創造』に挑んでいます」

PICK UP_03 REPERTOIRE GENESIS レパトア・ジェネシス


Repertoire Genesisは2014年10月設立した免疫多様性解析を基盤とした新規診断法・治療法の開発支援を行う。16年7月、創業時から支援するUTECらからシリーズBで総額5億円の資金調達を行った。

次世代免疫多様性解析で挑む「薬が100%効く世界」

T細胞受容体/B細胞受容体レパトア解析やネオエピト-プ解析などの免疫システムの多様性を解析する手法により、がんや自己免疫性疾患などの様々な病気に対する効果的な薬や診断薬の開発を加速化させるプラットフォーム技術を持つRepertoire Genesis(レパトア・ジェネシス)。

そのはじまりは1989年にさかのぼる。代表取締役である鈴木隆二が米国テキサス大学MDアンダーソンがん研究所に留学し、TCRレパトア解析技術を習得。研究者として鈴木は、塩野義製薬、武田薬品工業、国立病院機構相模原病院、国立感染症研究所などに務めていた。2014年に同社を設立。UTECは創業時から支援をしている。

現在、疾患カテゴリー別の薬の奏効率は、がん25%、アルツハイマー30%と一般的にいわれている。免疫の多様性をリンパ球の受容体側と疾患に特異的な抗原側の両方から詳細に解析する同社の技術は、これらの疾患向けの高額な治療薬に対するバイオマーカーとして期待されている。すでに大手製薬メーカーにて導入が進んでいる。

鈴木を支えているのは、外資系医療機器メーカーの事業開発をしていた営業担当取締役の市川満寿夫、前職のITベンチャーでIPO(新規株式公開)とその後の経営を牽引した財務・管理担当取締役の横溝大介。3人の経営チームで事業の成長を加速させている。

彼ら3人が見据えるのは、米ジェネンテックや米バイオジェン、米アムジェン。「プラットフォームだからこそ世界を変えられる」

今後、プラットフォーム技術の質向上や応用利用を促進し、免疫系に作用する新たな治療法および診断法の開発に取り組む──。彼らの目指すのは、薬が100%効く世界。鈴木はこう断言する。

「これからの医療は、これまでの医療の延長ではない」
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text by Forbes JAPAN photographs by Toru Hiraiwa

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