1880年創業。食料品店(エピスリー)から始まった。今でも、お菓子や保存食などの高級食品が並ぶ、開店当時と変わらぬノスタルジックな売り場が残っている。
店舗があるのは、ギャラリー・ヴィヴィエンヌという美しいパッサージュ(アーケード)の一角。店内には、有名どころはもちろん、注目の生産者やレアなワインなど、1万種類以上ものワインが取り揃えられている。
ルグランは、長い歴史の中で、生産者と信頼関係を築き、そして、パリのワイン文化を作ってきた。元CEOのジェラール・シブール・ボウドリさんは、「ルグランは、パリのワイン好きが集まる空間であり、特別な場所。ワインはただのコモディティではなく、文化や感性をも体現するもの」と言う。
ジェラールさんは、2000年からルグランの共同オーナーであり、経営にも参画していた。カリスマ・ワイン商人で、生産者と幅広いネットワークを持つ。奥様は、シャンパン「クリュッグ(KRUG)」の社長であり、その親会社であるLVMHグループのワイン部門責任者も兼任するマギー・ヘンリケさんだ。
ルグランの元CEO、ジェラール・シブール・ボウドリさん
世界中でワインが作られるようになった今でも、フランスは、ワイン生産の中心でありお手本である。そのフランスで、ルグランは、単にワインを売るだけではなく、次の時代を担う生産者を発掘し、ときには生産者にアドバイスをし、より良いワインが生まれるよう、一緒に歩んできた。
有名な例が、「ジャック・セロス」(Jacques Selosse)というシャンパーニュ。現在では、世界中で高い人気を誇るため、入手困難なシャンパーニュの一つだ。ルグランは、1980年代、父であるジャックから継承したアンセルム・セロスが、駆け出しだったころからの付き合いだ。
ルグランは、アンセルムが無名の時代から彼の可能性を見出し、サポートしてきた。例えば、今よりドサージュ量が多く、やや甘めのシャンパーニュが主流だった当時、彼にドサージュ量を減らし、現在では人気の高い「極辛口」(Extra Brut)に転向するようアドバイスしたのが、ルグランの3代目であるルシアン・ルグランだ。そして、それが、後に、「V.O.」というドサージュなし(糖分追加なし)のキュヴェが生まれると素地となった。今では、アンセルム自身も、後に続く後輩生産者に絶大な影響を与える存在になっている。
ルグランは、2013年から、日本の中島董商店が親会社である。ジェラールさんによると、将来のパートナーを選ぶ際に重要視したことは、ルグランの伝統とDNAを理解してくれることだった。
現在では、日本からパリ本店のワインを買うこともできる。
Legrand Filles et Fils
住所: 1, rue de la Banque 75002 Paris
営業時間:月 11時〜19時 火-土 10時〜19時半