ディザスターの幕の内弁当、映画「ジオストーム」が描く2022年

「ジオストーム」主演のジェラルド・バトラー(Kathy Hutchins / shutterstock.com)


もちろん、物語の進行とともに世界各地で起こるディザスターの映像は挟み込まれる。

香港では、異常な温度上昇から地割れが起こり、大火災が起こる。リオデジャネイロでは海が凍りつき、寒波が襲い、人々が逃げまどう。アラブ首長国連邦では、海面が急上昇し、あの世界一高い建造物バージュ・カリファも傾き、街は洪水に見舞われる。インドのムンバイでは大竜巻が起こり、真冬のモスクワは熱波に襲われる。日本でも銀座に岩のように大きな雹が降り注ぎ、街行く人々を直撃する。

まさになんでもありの「幕の内弁当」状態で災害場面は登場するが、いずれのエピソードもニュース映像のように通り一遍で、やはりこれを期待して劇場に足を運んだ人間には物足りないかもしれない。ちなみに、劇中で大災害に見舞われるのは、主にアジアと南アメリカ。ヨーロッパはいったいどうなっているのだろうと、この場所の選択には何らかの意図も感じてしまう。

さて、この映画、撮影が始まったのは2014年の10月だった。そして翌年2月には撮影を終えている。当初は1年後の2016年3月に公開される予定であったが、出来に満足しなかった映画会社が再撮影を行ったためか、2016年10月に公開が延期される。さらにその後も2017年1月、2017年10月と3回も公開日が変更されている。この間に、映画で設定された未来(2019年〜2022年)と、現実が時間的に接近してきたわけだ。

前述したように、映画のなかでは、来年2019年に地球を歴史的な異常気象が襲い、世界各国は協同して気象のコントロールシステムを構築することになっているのだが、現時点の世界情勢と宇宙開発の状況を照らし合わせてみれば、そのようなことが可能になるのは10年後、20年後のことのように思えてしまう。

このあたりの現実離れした設定が、作品の評価をいまひとつのものにしているのかもしれないが、物語の冒頭で描かれる、2019年に起こる温暖化による大規模な異常気象は、実は、明日来るとも限らない。

そのとき、果たしてわれわれの世界は、この映画のように気象をコントロールするシステムを構築し得るのか(絶対に無理だ)。そのようなことをついつい考えてしまう。

もちろん、地球温暖化に対する取り組みは、このようなコントロールシステムの構築で済むことではない。はっきり言って、この発想は極めて映画的な発想であり、現実はもっともっとシリアスだ。そのあたりにまで言及していけば、また趣の異なった作品になったかもしれない。

ちなみに、タイトルの「ジオストーム」とは、地球規模で展開していく破滅的な大災害ということらしいが、ともかくは、このディザスターが現実とはならないことを祈りたい。

文=稲垣伸寿

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