ディザスターの幕の内弁当、映画「ジオストーム」が描く2022年

「ジオストーム」主演のジェラルド・バトラー(Kathy Hutchins / shutterstock.com)

「ディザスターフィルム(disaster film)」というジャンルがある。「ディザスター」は大災害や大惨事を意味する言葉だが、このジャンル、日本ではパニック映画とも言われ、自然災害のみならず、重大事故を題材としたものや怪獣映画に至るまで、そのなかに括られていたりする。

映画「ジオストーム」は、「ディザスター映画の幕の内弁当」という内容紹介もあるくらいで、予告編では、リオデジャネイロの海岸を寒波が襲うシーンなど、世界各地で起こる天変地異の場面が流されていた。配給会社としては、このジャンルとして売り出したいのだろう。

実際、映画のなかにディザスターを描写したシーンはある。とはいえ、この作品は、ディザスターそのものより、それに対処する政府機関の舞台裏を描いたものであり、どちらかというと、2016年に日本で大ヒットした「シン・ゴジラ」に近い作品かもしれない。

そのあたりが原因かどうかは詳らかではないが、アメリカではいまひとつの興行成績だったと聞く。観客は自然災害のフルコースを期待したのかもしれないが、意外にスペクタクルな部分は少なく、この同時多発的に起こる異常現象の、真相解明にあたる人々の「犯人探し」を見せられたからかもしれない。映画「ジオストーム」はディザスターフィルムというよりも、サスペンスミステリーといってもよい作品なのだ。

物語の始まりは2019年。地球では温暖化の影響で、未曾有の異常気象が多発していた。しかし、アメリカが中心となり、世界18か国が協力して、国際気象宇宙ステーション(ICSS)を中心に人工衛星網を張りめぐらし、すべての気象をコントロールすることに成功する(来年こんなことが可能になるのだろうかと、まずツッコミを入れたくなる)。

そのコントロールシステム構築の中心となったのが、主人公のジェイク・ローソン(ジェラルド・バトラー)だったが、彼はかねてからの辛口言動がもとで、責任者の立場から追われてしまう。その後釜に座ったのは、彼の弟、マックス(ジム・スタージェス)だった。

3年後の2022年、アフガニスタンで、村全体が村人ごと凍ってしまうという局地的寒冷現象が国連の調査団によって発見される。その時点で、国際気象宇宙ステーションを管理していたのはアメリカで、事態を重く見た合衆国大統領(アンディ・ガルシア)は緊急会議を開くが、その場で原因は気象コントロール衛星のトラブルだということが明らかにされる。

実は、ICSSの管理権は、2週間後に国連に移ることになっており、アメリカは秘密裏にこのトラブルを処理しようとする。責任者であるマックスはシステム構築の立役者でもあった兄のジェイクのもとを訪れ、彼にICSSに飛び、気象衛星の不具合を調査し、修復することを要請する。

ジェイクは責任者の立場を追われてからは、フロリダの海辺でひっそりと暮らしていたが、弟からの懇願を受け、ふたたび宇宙に飛ぶことになる。ここから、ICSSの異常をめぐる原因究明のタイムリミット劇が始まるのだが、システム不具合の裏には実は大いなる陰謀があり、ドラマはその犯人探しへと移行していく。
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文=稲垣伸寿

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