なぜ社員の飲み代を会社が負担するのか? 補助制度の狙いと効果

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どんなにITが進化して情報共有が容易になっても、人間同士のコミュニケーションにはときどき誤解が発生する。組織の問題の多くがコミュケーションに起因するものだ。

このコラムでは、Sansanが創業から10年間で導入した社内制度について、その設計・運用上のポイントなどを紹介する予定だが、第一回の今回は、このコミュニケーションの問題について取り上げたい。当社もこの問題についてはいつも頭を悩ませ、手を打ってきたが、その中でも自信を持って紹介したい制度がある。

それが「Know Me」だ。

読みは「ノーミー」。日本語に訳せば「私を知って」であり、その響きは「飲み」である。つまり、飲み会を通して社員同士の相互理解を深めてもらうことを目的とした飲み会補助制度だ。ダジャレのような名前だが、制度はネーミングが8割といっても過言ではない。

「Know Me」とは、「他部署」で「過去に飲んだことがない」人と「3名まで」であれば、飲食費を1人につき3千円まで補助する制度だ。

「なぜ社員の飲み代を会社が補助する必要があるのか?」と疑問に思った人もいよう。「昔から上司は部下を飲みに連れていくものだし、同僚同士で飲みに行くのは普通のこと。業務でないものに会社がお金を使う意味がわからない」そんな声もあるだろう。しかし、ここにはあえて会社がお金を払ってでもやった方がいい3つの理由がある。

理由1. 飲みに行くと仲良くなる

言わずもがなであるが、飲みに行くと仲良くなる。仲良くなると仕事がしやすくなる。飲み会の次の日から呼び方がニックネームやファーストネームになって、距離がぐっと近づくということは誰にでも経験があるはずだ。

そして、あえて「これまでに接したことがない」「他部署の人」(例えば営業とエンジニアなど)で飲みに行くことで、他部署の仕事への理解が深まり、いわゆるセクショナリズムの発生を防止できる効果がある。

理由2. 放っておいても飲みに行かない

仕事終わりに上司が部下を飲みに誘う光景はずいぶん減ってきた。家族持ちの多いマネジメント層はもちろんのこと、若手層も仕事とプライベートを分ける傾向にあり、特別な社内イベントでもないない限り、飲み会が自然発生する機会は減ってきた。よって、社員を飲みに行かせたければ、何らかのインセンティブが必要になってきている。

ちなみに、「飲み」とはいっても必ずしもお酒を飲む必要はないし、時短社員に配慮してある時からランチもOKにした(もちろんお酒はNGだが)。ランチの場合の補助は1人千円を補助している。

理由3. 制度化することでオフィシャル感が出る

社員を飲みに行かせることを会社が推進していることに大きな意味がある。もちろん、制度の利用は任意なので、行きたい人だけが行くわけだが、「会社が推進している」という背景が背中を押してくれる。

オフィシャルな制度なので、相手を飲みに誘いやすくなるし、誘われた方もすんなり受け入れられる。これが極めて重要。特にこれまで関わったことのない人を誘う時に、口実がないとなかなか誘えないし、全く知らない人から誘われたら「なんで?」と思うが、会社がそれを推進しているので、誘う方も誘われる方も気が楽だ。これがまさに「制度化する」ことの意味である。
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文=角川素久

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