世界で最も刺激的なオンラインの学び場、ミネルバ大学大学院

授業中の画面はこんな感じ。世界中からクラスメイトが参加し、議論中心の授業を展開する。筆者は右下。


ミネルバ大学院の成績は、テストはなく、録画された発言内容とPoll(短い記述問題)の回答、論文などの課題で評価されます。ここでの評価基準は答えの正否ではありません。ミネルバが定義する100以上にわたるコアスキルや思考方法を、いかに洗練された手法で活用しているか、というプロセスが重視されます。

例えば伝染病問題の場合、まず 「#rightproblem : 適切な問題定義」の思考方法で問題の根幹を捉えているか。そのうえで、感染症患者の症状のデータを収集、観測し、解決策となる仮説を組み立てる際に「#hypothesisdriven: 仮説主導」のテクニックが使いこなせているかが評価されます。その後、状況に合った統計分析手法を駆使し、「#testability: 検証性」の手法に沿って仮説の検証を行っているか、という具合に評価項目が細かく体系化されています。

授業中はこのように、どのコアスキル、思考方法がこの問題解決のために有効だろう? とそれぞれを組み合わせてプロセスを話し合うことが中心です。授業の回を重ねるごとに、これらのキーワードを共通語にクラスメイトと議論をするようになっています。

多様性をフェアに実現する仕組み

授業は基本的にオンラインで行われるため、クラスメイトは世界中(北米、南米、ヨーロッパ、中国)から受講することができます。好奇心溢れる大人、世界をまたいで活躍している人が多く、出張先から参加する生徒もいて、場所の制約を受けないバーチャルクラスは最適なスタイルだと実感しています。授業時刻は米西海岸時間ベースのため、時差だけには注意です。

多国籍の学生が集まる大学院はたいてい、どうしても英語が得意な生徒が発言しがちになります。また積極的に発言する生徒が先生から一目おかれ評価が高くなる、ということもあるかもしれません。

その点、ミネルバのオンラインプラットフォームは、多様性を重視する授業を運営する面でも工夫がされています。教員側の画面には、生徒の“発言秒数”が記録されるため、発言していない生徒にその機会を与えるためアラートが出るようになっているのです。これが先生から生徒へのバイアスを防ぐことにつながっています。

ちなみに私は日本生まれ、日本の大学出身で英語ネイティブのクラスメイトの議論の勢いに圧倒され遠慮してしまうことがあるのですが、多様性を担保するこの仕組みのおかげで、平等に発言する機会を得られているのはありがたいです。

難解なグローバル問題など答えが出にくい問題が増えている今、偏った意見に寄るのではなく、できるだけ多様なメンバーで多様なアイディアを出し合い、共に本質を模索しながら議論をすることが重要になっています。

その時代において、ミネルバの授業では、全員の生徒が意見を発信する仕組みを運営システムの中に組み込むことで、多様なアイディアを模索し議論の内容を深めることを可能にします。”本質を理解するスキルがあるのにポテンシャルが発揮できない生徒” にチャンスが回ってくるこの制度にはベネフィットがあるのではないでしょうか。

最新テクノロジーと学びの科学を最大限活用しているミネルバは、多様なメンバーと本質議論を繰り返し、フェアな思考のキャッチボールをくれるだけではありません。これまでの教育分野の常識を塗り替えているそのほかの点は、次回以降でご紹介できたらと思います。

編集=フォーブス ジャパン編集部

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