ビジネス

2018.01.29

休養や癒しに着目、「リカバリーウェア」生みの親の考察力

ベネクス代表取締役 中村太一

運動中ではなく休養中に着るという、逆転の発想により考案した、ベネクスのリカバリーウェア。50万枚超を売り上げた中村太一社長の、アイデアの源は、場所を選ばない日々の考察にあった。


ベネクスは休養時に着用するリカバリーウェア「VENEX」の製造・販売を行っています。前職の介護現場に着想を得て、ヘルパーさんの体調ケアにニーズがあると考えたことからリカバリーウェアの開発に乗り出したのですが、介護業界ではなく、体を鍛えることに関心の高いゴールドジムのトレーナーの方々からの熱烈な支持をいただきました。

その後、伊勢丹での取り扱いが始まったことで、仕事の疲れを癒やしたいというビジネスマンの方々にも一躍知られる存在になりました。

VENEXが受け入れられた理由のひとつは「わざわざ感」がなかったことだと思います。

僕は休みの度に自然を求めて出かけるのですが、子どもたちを見ていて面白いのが、何をするわけでもなくずっと駆け回っているのに楽しそうなこと。特別な道具がなくてもいいんです。楽しんで継続する上では、わざわざ何かをしなくてもいいシンプルさが、大事な要素だったりする。

VENEXも、仰々しい機器だったり手順が複雑なアイテムだったりしたら、一部の人にしか手に取ってもらえなかったと思うんです。もともと家で着用していた衣服を、VENEXに変えたらいいという単純な置き換えだったから、受け入れてもらえたはず。そんなことを、遊ぶ子どもの姿から教えられています。

また、リカバリーという意味では、サプリメントも商品ターゲットになりますが、わざわざ錠剤を飲むという形式ではなく、例えば味噌の中に必要な成分が入っていて味噌汁を飲むことで摂取できるなど、もともとある生活に溶け込むスタイルにできたらより根付きやすいだろうなあなんていうアイデアも、普段食事をしながらふと浮かんできたりします。

僕の目標は、リカバリーというジャンルを確立して、暮らしに休養を取り入れることが普通になる世の中にすること。そういった意味では、休養の先進国であるドイツの事例は、非常に勉強になります。ドイツ水泳連盟のオフィシャルパートナーを務めていることもあり、ベネクスにとっても縁が深い国です。
次ページ > 日本とドイツで全く異なる「休養」の実態

構成=伊勢真穂 写真=yOU(河崎夕子)

この記事は 「Forbes JAPAN 日本の起業家 BEST100」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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