所属部署はCHO室と言います。よく、「チョ室」といわれますが、CHOはChief Health Officerの略であり、日本語にすると「最高健康責任者」です。IT企業にそんな部署があるのかと、よく驚かれる方がいますが、業務内容を話すと更に驚かれます。年間100回の健康セミナーや健康的な飲食店を集めたアプリ開発、その延長でヘルシーなお弁当開発をはじめ、腰痛撲滅プロジェクトに喫煙室改造、更にはラジオパーソナリティまでしています。
ラジオパーソナリティは一見健康活動と関係ないようにみえますが、「渋谷のラジオ」というコミュニティFMの「渋谷でケンコー」という番組で、毎週火曜日の昼にパーソナリティとして出演しています。健康に関することだけをひたすら話す55分間、なんと生放送です。2016年7月から始め、すでに1年半以上になります。
ディー・エヌ・エー CHO室室長代理 平井 孝幸(左)とアシスタントの佐藤万葉子さん
この連載ではそのラジオで話している内容を中心に紹介していきますが、初回となる今回は、私がどういう人間なのか、CHO室を設置するにいたった経緯を紹介します。
「時代は健康経営」という文字が人生の転機
思い起こせば2015年夏、私は人事部にいました。当時、業務上、社内の人と接することが多かったことから、社内の人を見るたび気になっていたことがありました。
それは、歩き方や姿勢についてです。「何でそんなことを」と周りからよく言われましたが、どうしてもそこに意識がいってしまう。
というのも、もともと健康分野とゴルフにばかり関心が集中してしまう私は、10数年前から指導を受けているプロゴルファーから、ゴルフの上達のために歩き方を極めるよう言われたことがあり、それ以来歩き方の上達に人並みならぬ情熱を傾けていました。
理想としているタイガー・ウッズの歩き方について語りだすと、それだけで話が終わってしまうのでやめておきますが、歩き方で性格がわかるといってもいいくらい、歩き方というのは奥が深いのです。
日々、より良い歩き方を模索する私にとって、会社の廊下でスマホ片手に体に不必要な負担をかけながら歩く人たちの姿は、最重要かつ最優先で解決したいことでした。ただ、理想の歩き方を実践する私が、それによって仕事のできる人間になったかといえばそうではないように、歩きのクオリティと仕事の出来不出来が連動しているとはいえず、当時はまだ歩き方改善プロジェクトを始めるには至りませんでした。
その代わり、個人的に、周りの人が歩き方や姿勢を改善するための手助けを始めました。一つの事例として身近な女性社員に姿勢がよくなる手作りゴムチューブを渡したことがあります。
すると、歩き方はもちろん、座り姿勢もよくなると好評で、買いたいという人もあらわれるまでになったのです。後日、聞いた話では、肩甲骨周りのストレッチや冷え性対策にもなったということで、想定外の効果をもたらせていたようでした。
このように歩き方や姿勢の改善活動をしていた矢先、とある雑誌の表紙にあった「時代は健康経営」という文字を目にしました。これが私の仕事人生に転機をもたらすきっかけになったのです。健康経営とは、会社が社員の健康をサポートすることで、社員が元気になり生産性が上がる。その結果、会社の業績向上にもつながるうえ、さらには採用力強化や病気リスクの低減になると考えています。