セクハラの告発の先に必要な「どう変えるか」議論

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職場だけではなく、取引先との関係性の中でも色々なことがありましたが、幸いなことに私は「そこまで」ひどい仕打ちを受けたことはないと、思っていました。ただ、今になって思えば、「そこまででも……」と自分の中で線を引いてしまっていたのかもしれません。

先日、この「#MeToo」について知り合いの女性と話す機会があったのですが、女性の先輩から「うまくかわす方法を覚えなさい」と教わった経験を、私も彼女も持っていました。

そう、「かわす」です。それは、起こることが前提で「かわし方」を学んでない自分が悪い、ということ。笑顔で「またそんなこと言って」と言えるのが、社会人としてふさわしい振る舞いなのだ、というのが先輩のアドバイスでした。

先輩たちがたくさん出会ってきた「場面」から身につけた処世術を、私がそんな目に遭わないようにと教えてくれたことで、ある意味、私を救ってくれた方法なのだと思います。でも、一方で我慢することが当たり前になって、「他の誰かが傷ついていることにも見ないふりをしてしまっていたのではないか」と、思うこともあります。

直接的なセクハラ・パワハラではないかもしれませんが、個人的にずっと引っかかっているのは、マネージャー合宿でのことです。今ではだいぶ女性のマネジメント職は増えたと思いますが、以前はもっと少なく、合宿に集まったマネージャーの中で女性は私一人でした。

その合宿で部長は、みんなの前で、「女性は3年持てばいい。どうやって3年で最大の成果を出してもらえるかを考えよう」と、真剣な顔で言ったのです。

一生懸命働いて成果を出し、会社にも貢献してきたつもりだった私は、すごく悔しくて、この時は抗議しました。しかし、こんな失礼なことを言われても、やはり抗議できない人も、多いかもしれません。

昨年末から始まった「#MeToo」は、読んでいて辛くなる人も多いと思います。ただ、こうした方々の体験を読んで、また「自分はそこまで関係ない」「そこまでひどい仕打ちを受けてはいない」と思わないようにしてほしいと願います。「嫌だ」「辛い」と感じたら、それはもう深刻なセクハラ・パワハラだと思うのです。同時に、私も誰かにそう思わせているかもしれない、と考える必要もあるのではないでしょうか。

告発することだけが全てではない、とも思います。大事なのは、「そのパワハラ、そのセクハラが、相手を傷つける」と知ってもらうこと、そしてそれを改善しようとすることです。

この「#MeToo」を受けて「#HowIWillChange」というハッシュタグも広まってきています。オーストラリアのジャーナリストのベンジャミン・ロウさんが始めたもので、「どう変わるか」を促進していくものです。

「#MeToo」がきっかけで始まったこの議論は、男性を叩くためのものでも、セクハラの問題だけでもないと思います。前述した通り、人間関係は働き方を考えていく上で避けて通れない問題です。避けて通れないなら、問題を認識してどう解決できるかを考えていく。一人では難しいことも、皆でやってみる。それが解決の糸口を見つけるルートの一つなのではないでしょうか。

文=藤本あゆみ

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