セクハラの告発の先に必要な「どう変えるか」議論

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2017年にアメリカから始まり、世界に波紋が広がったハッシュタグ「#MeToo」をご存知ですか?

ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏によるパワハラ・セクハラや暴行について、10月5日にニューヨークタイムズが報じたニュースがきっかけでした。その後、瞬く間に全世界に、「私も」「私も」と、過去に辛い目に遭った人たちのSNSによる告発の連鎖が始まったのです。

日本でも、ジャーナリストの伊藤詩織さんが告発したセクハラ(伊藤さんの主張が正しければセクハラの域をはるかに超えた性犯罪です)、作家・ブロガーのはあちゅうさんが告発した被害が大きな話題となり、パワハラ、セクハラがあちこちで語られています。

働き方のストーリーを探し、集めていくのが私たちat Will Workのミッションの一つですが、素敵なストーリーがある一方で、職場環境や人間関係にもがき苦しみ、困惑している人たちの辛いストーリーが多いのもまた事実です。働き方を考えていく上で、環境や関係は欠かせないもの。なぜなら仕事は一人で完結するものではないからです。

2015年秋、厚生労働省により、25~44歳の働く女性約2万6000人を対象にしたセクハラに関する初の実態調査(企業アンケートの有効回答1711社4654人+ウェブモニター調査回答5000人)が実施されました。

その結果、セクハラを経験した人の割合は28.7%であり、その内容は(複数回答)、「容姿や年齢、身体的特徴を話題にされた」(53.9%)、「不必要に体を触られた」(40.1%)、「性的な話や質問をされた」(38.2%)の順で、「執拗に二人きりでの食事等に誘われたり、交際を求められたりした」(27.5%)、「性的関係を求められた、迫られた」(16.8%)といった深刻なセクハラもやはり少なくありませんでした。

ところが、「セクハラを受けた本人の対応」については、「加害者に抗議した」人はわずか10.2%、「上司に相談した」人は10.4%、同僚に相談した」人は14.4%、「会社の相談窓口、担当者に相談した」人はたった3.1%でした。

圧倒的多数だったのは、「我慢した、特に何もしなかった」(63.4%)だったのです。つまりセクハラを受けた大多数の人が、誰にも相談せずに、「泣き寝入り」をしていたのです。

実は、私もその一人です。私はキャリアのほとんどが営業職だったので、取引先の方に腰に手を回されたり、二人だけで飲みに行こうと誘われることは普通にありましたし、社内では、独身の頃は「彼氏もいなくて、お前女として枯れてるな」と言われたし、結婚が決まってからは「夜の営みはどんな頻度なの」と聞かれたりもしました。今思えば、結構ひどいセクハラですよね。

ただ私も、本人への抗議も、会社への相談もしませんでした。厚生労働省の調査でいえば、「我慢した、特に何もしなかった」という回答になります。
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文=藤本あゆみ

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